2028年のストレスチェック義務化(50人未満)で産業医の仕事はどう変わるか
こんにちは。産業医の角田拓実です。
今回は「50人未満の事業場でもストレスチェックが義務になると、産業医の仕事はどう変わるのか」について解説していきます。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、これまで努力義務だった労働者50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務づけられました。施行は2028年4月1日です。
この記事を書いている2026年10月の時点では、まだ1年半ほど先の話です。それでも、企業の担当者とお話ししていると、ストレスチェックの困りごとの相談の中で義務化の話が出るようになりました。
この記事では、制度で何が変わるのかを一次資料で確認したうえで、50人未満の事業場とも仕事をしている私の実感をお伝えします。会社側の手続きは扱わず、医師の仕事に絞って整理します。
Dr.瑛理50人未満の会社もストレスチェックが義務になると聞きました。私たち医師の仕事は増えるんですか?



増える場面はあります。ただ、すべてが外部の医師に来るわけではありません。順番に見ていきましょう。
何が、いつから変わるのか


ストレスチェックは2015年から、労働安全衛生法で事業者に実施が義務づけられています。ただし50人未満の事業場は、法律の附則で「当分の間、努力義務」とされてきました。
2025年5月14日に公布された改正法(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律)で、この附則が削られます。施行日は政令で2028年4月1日と定められました。
令和10年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。
厚生労働省「ストレスチェック制度」
医師の仕事に関わる点を、50人以上の事業場と並べると次のとおりです。
| 項目 | 50人以上 | 50人未満(2028年4月から) |
|---|---|---|
| ストレスチェックの実施 | 義務 | 義務 |
| 申し出た高ストレス者への医師の面接指導 | 義務 | 義務 |
| 労働基準監督署への結果の報告 | 必要 | 不要 |
| 集団分析 | 努力義務 | 努力義務 |
| 産業医の選任 | 義務 | 義務なし |
高ストレスと判定された人が申し出たときに医師が面接指導を行う決まりは、事業場の規模にかかわらず同じです。50人未満の事業場でも、面接指導をする医師が必要になります。
50人未満の事業場に、産業医の選任義務はない


ここが誤解されやすいところです。産業医を選任しなければならないのは、労働安全衛生法施行令第5条で「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」と決まっています。
2028年の改正は、この線を動かしません。50人未満の事業場は、ストレスチェックは義務になるが、産業医を置く義務はないという形になります。
ですから、義務化で医師に来る声かけは「産業医に就任してください」よりも、面接指導の依頼や、困ったときの相談役といった形が中心になると考えています。



産業医を置く義務がないなら、医師にはどんな形で仕事が来るんですか?



私の担当先の例でお話しします。50人未満の事業場とも、実はいくつかの形でお付き合いがあります。
医師に回ってくる仕事は何か


いちばん多いのは、ストレスチェックの後の面接指導です。高ストレスの人が申し出れば、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません。
なお、ストレスチェックそのものを行う「実施者」を医師が務める道もあります。ただ50人未満の事業場では、プライバシー保護の観点から、ストレスチェックを健診機関などの外部機関に委託することがマニュアルで推奨されています。
50人未満の事業場との仕事の実際
私のところにも、50人未満の事業場から面接指導の単発や、顧問のような相談の仕事がちょこちょこ来ます。同じ会社から繰り返し声がかかることもあります。単発の依頼は、規模を問わず全体で年20件くらいです。
担当している約30社の中にも、50人未満の事業場があります。形は大きく分けて二つです。
- 産業医として選任されているわけではないが、必要なときに訪問して産業医と同じような業務をしている
- 相談を受けるだけの顧問として契約している
どちらも毎月訪問するような定期の仕事ではなく、単発の依頼が多いです。
報酬の水準は、嘱託の産業医とだいたい同じくらいです。顧問料だけをいただいて訪問料はかからない形もあり、仕事が発生したときにその都度追加でいただくこともあります。
面接指導の単発をどう受けて、当日どう進めるかは、こちらの記事にまとめています。


面接指導以外の単発の仕事の種類と相場は、こちらです。


「依頼が一気に増える」と言い切れない三つの理由


義務化で、面接指導を受ける人は増えると考えられます。ただ、その依頼がそのまま外部の医師に来るとは限りません。一次資料を読むと、入口がいくつかに分かれていることが分かります。
1. 地域産業保健センターで無料で受けられる
労働者数50人未満の事業場における医師の面接指導の実施は、最寄りの「地域産業保健センター」(以下「地産保」といいます。)に依頼して、無料で受けることができます。
厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
地域産業保健センターは、労働者健康安全機構が運営し、全国350か所に置かれています。登録産業医がいて、面接指導や健診結果についての意見などを無料で受けられます。ストレスチェック自体はセンターでは行っていません。
私自身はセンターに関わっていませんが、先日センターの方とお話しする機会がありました。そのとき聞いた話では、面接指導などの相談を受けていて、調整に1か月ほどかかってから面談に至るそうです。
2. 決まった医師がいれば、その医師に頼むのが望ましいとされている
ストレスチェック又は面接指導は、事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医等が実施することが望ましい
厚生労働省「ストレスチェック指針」
大企業の営業所のように本社の産業医がいる場合や、日頃から相談している医師がいる会社では、その医師が面接指導を担うのが自然です。地域産業保健センターも、本社の産業医の協力を得られる営業所などは利用できないことがあるとしています。
3. 外部機関のパッケージの中で決まる
マニュアルでは、ストレスチェックの委託先の外部機関が、面接指導もメニューの一つとして提供していることがあると書かれています。その場合、医師は外部機関を通じて入ることになります。
私の経験でも、紹介会社経由の単発の案件は、ストレスチェックの実施から面接指導までがセットになったものが目立ちます。
義務化で増える仕事の入口は、会社からの直接の依頼、外部機関や紹介会社のパッケージ、地域産業保健センターの登録産業医に分かれます。



仕事の総量は増えても、入口はいくつにも分かれます。自分がどこから入るのかを考えておくことが大事です。
いまからできる準備(2028年4月までに)


これから産業医を始める先生に、私が勧めたい準備は二つです。
ストレスチェックのルールをしっかり覚える
50人未満の会社は、制度に慣れていないことが多いです。医師の側がルールを押さえていると、それだけで頼りにされます。最低限、次の点は説明できるようにしておきましょう。
- 検査の結果は本人に直接通知され、本人の同意なく会社には渡らない
- 高ストレスの人が申し出たら、医師による面接指導を行う
- 申し出たことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない
- 医師が会社に伝えるのは、就業上の措置に必要な最小限の情報にとどめる
面接の順番と、何を聞くかを勉強しておく
小規模の案件だからといって、受ける・受けないの線引きは特にしていません。お困りで、費用感の点で問題がなければ、お仕事をさせていただくことが多いです。



義務化はまだ先ですが、ルールと面接の型は今から準備できますね。



そうです。単発の面接指導がリピートや嘱託の契約につながることも結構あります。
産業医の働き方の全体(専属・嘱託・兼任)は、こちらにまとめています。


登録先を先に見ておきたい方は、以下の3社から始められます(広告)。どこも登録は無料で、産業医の求人も扱っています。求人は会社ごとに違うので、2〜3社に登録しておくと案件を比べやすくなります。希望の働き方は事実どおりに選んでください。
まとめ
今回は2028年のストレスチェック義務化(50人未満)で産業医の仕事がどう変わるかに関して紹介を行いました。
- 2028年4月1日から、50人未満の事業場もストレスチェックが義務になる
- 申し出た高ストレス者への医師の面接指導も、規模にかかわらず必要
- 50人未満の事業場に産業医の選任義務はない。医師に来るのは面接指導や相談役が中心
- 地域産業保健センター(無料)、決まった医師、外部機関のパッケージと入口が分かれるので、依頼が一気に増えるとは言い切れない
- 準備は、ストレスチェックのルールと、面接の順番・聞くことを覚えておくこと



以上、「50人未満のストレスチェック義務化で産業医の仕事はどう変わるか」についてまとめました。ルールと面接の型を今のうちに身につけておくことをオススメします。
これから登録先を選ぶ先生は、こちらの記事も参考にしてください。










