直産とは?初期研修のあとすぐ産業医になる道と、最初に専属を選ぶ理由

初期研修のあとすぐ産業医になる直産。臨床なしでも大丈夫か、まず専属で修行がおすすめ
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目次

直産とは?初期研修のあとすぐ産業医になる道と、最初に専属を選ぶ理由

こんにちは。産業医の角田拓実です。

今回は直産とは何か、つまり初期研修のあとすぐ産業医になる道について解説していきます。

初期研修を終えたところで、「このまま臨床に進むより、産業医の道に進みたい」と考える先生もいると思います。一方で、「臨床の経験がないまま産業医になって大丈夫なのか」と迷う先生も多いはずです。

私自身、初期研修のあとは臨床をしていません。基礎医学の講座に5年在籍してから、産業医になりました。直産にかなり近い道です。

この記事では、その経験から、臨床経験が少ないことで困ったか、そして直産を選ぶならどう進むのがよいかをお伝えします。

Dr.瑛理

臨床の経験がないまま産業医になっても、やっていけるんでしょうか?

角田拓実

私自身ほぼ直産です。実際にどうだったかをお話しします。

直産とは。初期研修のあと、臨床を経ずに産業医になること

直産は初期研修のあとすぐ産業医になる道で、筆者は基礎医学の講座に5年在籍してから産業医になり、資格は研修を受けて取れると示す

この記事でいう直産は、初期研修を終えてすぐ、病院で臨床の経験を積まずに産業医になることです。

産業医の資格は、日本医師会の認定産業医などがあり、医師であれば研修を受けて取ることができます。集中講座は「認定産業医を希望する医師」などが対象とされているものが多く、研修医や専攻医のうちに取ることも考えられます。受講資格は講座ごとに要項で確かめてください。

私の場合は、初期研修のあと基礎医学の講座に5年在籍し、そこから産業医になりました。その間、臨床の外勤もほとんどしていません。

角田拓実

資格の取り方は別の記事にまとめています。研修中に取るなら、連休の取り方もあわせて計画しておきましょう。

直産のメリットと注意点

筆者の実感として、直産は柔軟に対応でき会社になじみやすい一方、やりがいの少ない仕事で身動きが取れなくなることがあり、自分で判断して進む道だと示す

直産には、良い点も注意点もあります。私の実感でまとめます。

良い点:柔軟に対応でき、会社になじみやすい

早い段階で産業医になるので、いろいろなことに柔軟に対応できます。病院や大学の文化に長くなじむ前なので、会社という場にもなじみやすいと感じます。

注意点:やりがいの少ない仕事で、身動きが取れなくなることがある

一方で、経験が薄いうちは、産業医としてやりがいを感じにくい仕事を紹介会社からたくさん受けてしまい、身動きが取れなくなることがあります。そうなると、なかなか研鑽ができません。

医局のようなルートはない。自分で開拓する

医局には決まったルートがありますが、直産にはありません。自分の進路をよく考え、戦略的に、自分で判断して進むことが求められます。

直産で大事なのは、自分で判断して進む姿勢です。どんな仕事を受けるか、その基準を最初に決めておきましょう。

角田拓実

直産は、自分でルートを切り開く道です。だからこそ、最初の数年の過ごし方が大事になります。

臨床経験が少なくても、1社目探しで不利になったことは特にない

臨床経験が少なくても1社目で不利はなく、約4か月かかったのは紹介の場に経験者が多いためで、面接ではなぜ産業医かと3管理を聞かれたと示す

私の場合、臨床の経験が少ないことで、1社目探しが不利になったことは特にありません。問題なくやれたと感じています。

理由の一つは、臨床と産業医では、やることが違うからです。産業医の仕事は、病気を治すことより、働き続けられるように職場と本人を支えることが中心です。

1社目が決まるまでには約4か月かかりました。ただ、それは臨床の経験の有無より、紹介の場に経験のある産業医が多く、未経験者に優しくないことのほうが大きかったと思います。

面接で聞かれたのも、なぜ産業医をやっているのか、3管理といった一般的な内容でした。臨床の経歴を細かく聞かれることはありませんでした。

Dr.瑛理

臨床の経験が少なくても、1社目で不利にはならなかったんですね。

基礎・研究の経験は、産業医で役に立った?

基礎医学の講座での経験は腰を据えて取り組む姿勢として役に立ったが、研究が直接生きることはそれほどなく、新しい分野への向き合い方が大事と示す

基礎医学の講座での経験は、腰を据えてしっかり取り組む姿勢としては役に立っています。

ただ、研究の経験が産業医の仕事に直接生きている、ということはそれほどありません。「これが役に立った」とはっきり言えるものは、特にないと感じます。

産業医は、病院や大学とは違う分野です。これまでの経歴より、職場の健康管理という新しい分野にどう向き合うかのほうが大事だと思います。

角田拓実

経歴に引け目を感じる必要はありません。産業医として学ぶ姿勢があれば、十分に始められます。

直美と直産の違い

直美は初期研修のあとすぐ美容医療、直産はすぐ産業医に進む道でやる仕事はまったく違い、筆者が見る直産が向いている人3タイプを示す

初期研修のあとすぐ美容医療に進む「直美」という言葉もあります。直産と並べて語られることがありますが、やる仕事はまったく違います。

私は、直美も直産も、それはそれでよいと考えています。それぞれの場所で、しっかり研鑽を積めばよいと思います。

直産が向いている人

  • 外科的な手技が向かないと感じる人
  • もう少し地に足をつけて働きたい人
  • 会社という場で、医学の知識を使って働いてみたい人

直美に比べると、利益はそれほど多くないと思います。それでも、会社で医学の知識を使って働くことに魅力を感じるなら、直産はおすすめできる道です。

Dr.瑛理

直美と直産では、向いている人が違うんですね。

直産で、いきなり嘱託から始めるとやりにくい

嘱託は臨床経験のある医師が選ばれやすいと筆者は感じており、直産でいきなり嘱託を探すと良い案件に出会いにくく学びにくいと示す

一方で、直産の先生がいきなり嘱託から始めると、かなりやりにくさを感じるはずです。

嘱託の案件では、臨床の経験がある医師のほうが選ばれやすい傾向があると感じています。直産でいきなり嘱託を探すと、良い案件に出会いにくいのです。

嘱託は、月1回〜隔月1回ほどの限られた訪問の中で、ひとりで判断する場面も多い働き方です。経験の浅いうちに、条件の良くない案件ばかりを受けることになると、学びにくくなります。

Dr.瑛理

直産だと、嘱託の良い案件には出会いにくいんですね。

直産なら、まず専属で1〜2年修行するのがおすすめ

専属の1日は朝出勤・午前に多い日は10人ほどの面談・午後に巡視や衛生委員会で、常時1,000人以上の事業場などに限られる専属で1〜2年修行を勧めると示す

直産を選ぶなら、私はまず専属の産業医から始めることをおすすめします。

専属は、みんながあまり選ばない働き方です。だからこそ、そこで1年なり2年なり、しっかり修行することで、研修に近い経験ができます。結果として、かなりレベルの高い産業医になれると思います。

専属が修行の場になる理由

私が製造業の大企業で専属をしていたときは、朝から出勤し、午前は面談(多い日は10人ほど)、午後は巡視や衛生委員会、健診結果の処理と書類作りをしていました。

毎日従業員と話し、決めた頻度どおりにフォローアップできます。嘱託では経験しにくい量と頻度で、産業医の仕事を積み重ねられるのです。

専属の求人は数が限られる

専属の産業医が必要なのは、常時1,000人以上の労働者がいる事業場などです(労働安全衛生規則 第13条)。求人の数は嘱託より少ないので、紹介会社に「専属を考えている」と早めに伝えておきましょう。

専属で経験を積んでから嘱託に移れば、「経験あり」として良い案件にも出会いやすくなります。ぜひ挑戦してみてください。

角田拓実

直産なら、まず専属で1〜2年。研修のつもりで取り組めば、そのあとの選択肢が大きく広がります。

直産のキャリアの流れ

筆者がおすすめする直産の流れは、はじめの1〜2年は専属で修行、その後に嘱託を少しずつ増やし、経験を積んだら独立する道もあると示す

直産の進み方の一例として、私がおすすめする流れは次のとおりです。

  • はじめの1〜2年:専属の産業医として修行する。面談・巡視・衛生委員会を毎日のように経験する
  • その後:嘱託の案件を少しずつ増やす。「経験あり」として良い案件にも出会いやすくなる
  • 経験を積んだら:独立して、自分で案件を受ける道もある

私自身は、嘱託から始めて案件を増やし、専属も経験して、いまは独立して約30社を担当しています。順番は違っても、経験を積みながら案件を増やしていくことは同じです。

角田拓実

ルートがないぶん、自分で流れを描いておくと迷いません。

直産を考える先生が準備しておくこと

直産の準備として、認定産業医などの資格を早めに計画、なぜ産業医かを言葉にする、紹介会社に専属の希望を伝える、違う分野と心得るの4つを示す
  • 認定産業医などの資格を取る:研修中は連休が取りにくいので、早めに計画する
  • なぜ産業医なのかを言葉にする:面接では志望の理由と、3管理といった一般的な内容を聞かれる
  • 紹介会社に専属の希望を伝える:専属の求人は数が限られるので、早めに伝えて話を待つ
  • 病院や大学とは違う分野だと心得る:経歴より、職場の健康管理に向き合う姿勢が大事
Dr.瑛理

まずは資格と、なぜ産業医なのかを整理するところからですね。

直産は批判される?臨床に戻れる?

筆者の見立てとして、直産は臨床経験がないことを批判されることはあるが仕事の性質が違い、臨床に戻るのは片道切符に近いので進むと決めておくと示す

臨床経験がないことを批判されることはある

批判されることは、結構あると思います。臨床経験を積んだ先生が世の中の多数派なので、「臨床経験もなしに産業医なんか」と言われることは、全然あり得ます。

ただ、臨床と産業医では、仕事の性質がかなり違います。直産は直産なりに、まず仕事をつかみ、少しずつ研鑽を積んでいけばよいと考えています。

臨床に戻れるか

臨床からは大きく離れるので、片道切符に近いところはあります。戻るなら、臨床の修行をし直す必要があります。

戻ろうと思えば、人生いつでも戻れます。ただ、産業医でうまくいくと、戻る人は少ないかもしれません。戻る道は持ちつつも、直産でしっかりやるなら、基本は「進む」と決めておくことをおすすめします。

角田拓実

批判を気にしすぎる必要はありません。仕事の性質が違うと割り切って、研鑽を積みましょう。

直産のよくある疑問

直産のよくある疑問として、研修医のうちの資格取得、嘱託の収入は1〜2時間の訪問で3万〜4万円が筆者の感覚、最初から嘱託だけで始める場合の3つに答える

研修医のうちに産業医の資格は取れますか?

認定産業医の集中講座は、「認定産業医を希望する医師」などが対象とされているものが多く、医師であれば申し込める講座が一般的です。受講資格は講座ごとに要項で確かめてください。研修中は連休が取りにくいので、休みの取り方とあわせて計画しましょう。

産業医の収入はどのくらいですか?

嘱託の場合、私の感覚(2026年時点)では、1〜2時間の訪問で3万〜4万円がボリュームゾーンです。専属の待遇は企業ごとに違う(800~1300万円が多い。週の勤務日数によって大きく変化)ので、求人の条件で確かめてください。

最初から嘱託だけで始めてもよいですか?

始めること自体はできます。ただ、臨床の経験がある医師のほうが嘱託で選ばれやすいと感じるので、良い案件に出会いにくく、やりにくさを感じるはずです。直産なら、まず専属で経験を積むことをおすすめします。

専属(常勤)の求人を探すなら、以下の3社から相談してみましょう(広告)。どこも登録は無料です。求人は会社ごとに違うので、2〜3社に登録しておくと比べやすくなります。希望の働き方は事実どおりに選んでください。

まとめ

今回は初期研修のあとすぐ産業医になる「直産」に関して紹介を行いました。

  • 直産は、初期研修を終えてすぐ、臨床を経ずに産業医になること。直美とはやる仕事がまったく違う
  • 良い点は、柔軟に対応でき、会社になじみやすいこと。注意点は、やりがいの少ない仕事で身動きが取れなくなること
  • 医局のようなルートはないので、自分で判断して進む
  • 筆者は初期研修のあと基礎医学の講座に5年在籍してから産業医に。臨床の少なさで1社目が不利になったことは特にない
  • 直産なら、まず専属で1〜2年修行する。研修に近い経験ができ、そのあとの選択肢が広がる
  • 批判されることはあり、臨床に戻るのは片道切符に近い。進むと決めて研鑽を積む

臨床を経ずに産業医になる道は、十分に選べる道です。最初の数年をどこで過ごすかを考えて、一歩を踏み出してください。

角田拓実

以上、「直産」についてまとめました。直産を選ぶなら、まず専属で修行することをオススメします。

産業医という仕事の全体像は、こちらの記事にまとめています。

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この記事を書いた人

産業医の角田拓実です。医局で多忙な業務をこなす中で自分の時間を確保できる働き方を求めて産業医に転向。コネクションも業務経験もない状態から嘱託産業医を始め、株式会社豊田自動織機の専属産業医を経て、現在は株式会社サンポチャートを設立し、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっています。このサイトでは、産業医になりたい医師が最初の1社目に出会うまでの手順と、紹介会社・働き方の比較を実体験から書いています。
資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー
著書:『40代から始めるあなたの予防医学』(自由国民社)、『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社)

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