精神科産業医の実際。精神科・心療内科の医師が産業医をするときの強みと気をつけること
こんにちは。産業医の角田拓実です。
今回は「精神科・心療内科の先生が産業医をするとき」について解説していきます。
精神科や心療内科の先生の中には、産業医の仕事に興味を持っている方や、知り合いから声をかけられた方もいると思います。
メンタルヘルスの問題に悩む会社は多く、精神科の経験は産業医の仕事でたしかに強みになります。一方で、診療の感覚のまま会社に入ると、思わぬところでつまずくこともあります。
私自身は精神科医ではありません。この記事では、産業医として精神科の先生に支えていただいてきた立場から、強みと気をつけることをお伝えします。
Dr.瑛理精神科だと産業医で有利だと聞きますが、本当ですか?



求められているのは本当です。ただ、精神科だからすべてがうまくいくわけではないので、両方を見ていきましょう。
企業が精神科・心療内科の医師に期待していること


精神科の先生はとても求められている
精神科・心療内科の先生は、産業医の世界でとても求められています。需要があるのは間違いありません。
会社の担当者はメンタルヘルス不調の対応で悩むことが多いので、心にかかわる分野の先生が評価されやすいのは自然なことです。特にメンタルヘルスの問題で困っている会社では、すぐにでも精神科の先生にお願いしたいと考えていることもあります。
ただし、精神科だからすべてがうまくいくわけではない
その一方で、精神科の先生であれば何でもうまくいく、というわけではありません。産業医の仕事は、メンタルヘルスの対応だけではないからです。
期待されるのは治療ではなく、働くうえでの判断と支え
法令で産業医の職務として定められているのは、健康診断の結果に基づく措置、面接指導、ストレスチェック、健康相談、衛生教育などです(労働安全衛生規則 第14条第1項)。治療は入っていません。
会社が精神科の先生に期待しているのも、病気を治すことではなく、その人が働くうえで問題がないかを確かめ、支えることです。
書類選考で診療科の経験をどう伝えるかは、こちらの記事が参考になります。


精神科の経験がそのまま活きるところ


頼りになる存在として会社を支えられる
私が専属産業医をしていたころ、精神科の先生にサポートという形で来ていただき、支援してもらうことがありました。
面談で話を聞き、状態を見立てる
ストレスチェックの後の面接指導などで、産業医に慣れない先生が苦手としやすいのが、メンタルヘルス不調の対応です。診療の領域の外だと感じる先生が多いからです。
主治医の診断書を読み解く
休職から復帰するとき、会社は主治医の診断書を求めます。ただ、主治医の判断は日常生活での回復の程度によることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとは限りません。そのため、産業医等が精査したうえで意見を述べることが重要とされています(厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)。
診断書を書く側の経験があることは、この精査の場面で手がかりになります。



診療の経験がそのまま使えるのは心強いです。



活きる場面は多いです。ただ、使い方を間違えると逆効果になるので、次の注意点も押さえておきましょう。
気をつけること①:産業医は治療者ではない


治療や診断に重きを置きすぎない
精神科の先生が産業医に来てつまずきやすいのは、治療や診断に重きを置いてしまうことです。
産業医の主な仕事は、就業上の問題がないかを確かめ、支援していくことです。ここを見失うと、「会社で治療している先生」になってしまいます。
自院の患者さんが勤める会社の産業医になるとき
自分のクリニックの患者さんが勤めている会社で、産業医も引き受ける形を見たことがあります。
これは避けるべきだというのが、一般的な考え方だと思います。患者さんの側に立ち続ける治療者と、会社と従業員の間に立って就業との兼ね合いを考える医師が同じ人になると、どうしても患者さん寄りになってしまうことがあるからです。
会社に伝えること、伝えないこと
健康診断や面接指導などの実施の事務に従事した人は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないと定められています(労働安全衛生法 第105条)。
会社が健康の情報を集めて使うのも、労働者の健康の確保に必要な範囲内とされています(同法 第104条)。会社に伝えるのは、働くうえでの配慮に必要なことが中心になります。
気をつけること②:メンタル以外の仕事もたくさんある


嘱託の訪問日の中身
嘱託産業医の訪問日は、2時間なら面談1時間・巡視30分・衛生委員会30分というのが私の典型です。
面談には、メンタルヘルスの相談だけでなく、健康診断で異常が出た人の相談や、長時間労働の面接指導も入ります。


健康診断の判定、ストレスチェックの後の面接
1年の中では、健康診断の結果の判定が年1〜2回あり、ストレスチェックの時期には面接が多くなります。
どれも欠かせない仕事
巡視、健康診断の判定、衛生委員会など、メンタル以外の仕事に優先順位をつけるのは難しいです。どれも大事な仕事なので、一つずつ覚えていきましょう。



メンタル以外の仕事も、少しずつ覚えていけばいいのでしょうか?



はい。どれも欠かせない仕事なので、訪問日の流れの中で一つずつ身につけていきましょう。
精神科・心療内科の医師が案件を探すときの進め方


どの入口からでも始められる
精神科・心療内科の先生は求められているので、産業医の仕事には入りやすいと思います。


精神科の先生としてサポートに入る形もある
私の専属時代のように、精神科の先生がサポートという形で会社に来ている場面もあります。そうしたところにも、仕事の需要はあると思います。
紹介会社には「産業医をやりたい」と伝える
紹介会社に登録したら、「産業医の仕事をやりたい」と定期的に伝えておくことが大事です。精神科・心療内科であることも、はっきり伝えておきましょう。
求人票で見る条件
嘱託の求人を見るときは、距離・報酬・従業員の人数規模のバランスを見ます。求人を見るときの条件は、こちらにまとめています。


臨床と産業医を掛け持ちで続けるときの考え方は、こちらの記事が参考になります。


登録先を先に見ておきたい方は、以下の3社から始められます(広告)。どこも登録は無料で、産業医の求人も扱っています。求人は会社ごとに違うので、2〜3社に登録しておくと案件を比べやすくなります。希望の働き方は事実どおりに選んでください。
まとめ
今回は精神科・心療内科の先生が産業医をするときの強みと気をつけることに関して紹介を行いました。
- 精神科・心療内科の先生はとても求められている。ただ、精神科だからすべてがうまくいくわけではない
- 面談で話を聞き見立てる力、主治医の診断書を読み解く力は、最初から強みになる
- 産業医は治療者ではない。治療が必要なら診療所や病院につなぐ
- 自院の患者さんが勤める会社の産業医を兼ねるのは、避けるのが一般的な考え方
- メンタル以外の仕事もどれも大事。訪問日の流れの中で一つずつ覚える
- 入口はどこからでもいい。紹介会社には産業医をやりたいと定期的に伝える



以上、「精神科・心療内科の先生が産業医をするとき」についてまとめました。チャンスがあれば、ぜひ一歩を踏み出してみることをオススメします。
登録先を選ぶときは、こちらの記事も参考にしてください。









