産業医はリモートでできる?オンライン面談の要件と在宅でできる業務

産業医はリモートでできる?面談はオンライン、巡視は現地
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目次

産業医はリモートでできる?オンライン面談の要件と在宅でできる業務

こんにちは。産業医の角田拓実です。

今回は「産業医の仕事はリモートでどこまでできるのか」について解説していきます。

コロナ禍をきっかけに、産業医の面談もオンラインで行うことが当たり前になりました。地方に住んでいる先生や、子育て中で移動の時間を取りにくい先生からは、「自宅から産業医の仕事ができないか」という声を聞きます。

結論から言うと、面談や衛生委員会はオンラインでも行えますが、職場の巡視は現地に行く必要があります。オンラインだけで産業医を続けることはできません。

この記事では、厚生労働省の通達でオンラインにできる業務とできない業務を整理し、私が実際にどこをオンラインにして、どこを訪問しているかをお伝えします。

Dr.瑛理

子どもが小さいので、できれば自宅から産業医の仕事をしたいんです。オンラインだけでも成り立ちますか?

角田拓実

オンラインでできる業務は確かに増えました。ただ、通達で現地が必要と決まっている業務があります。順番に見ていきましょう。

オンラインでできる業務と、現地が必要な業務

厚生労働省の通達による、オンラインでできる産業医の業務(面接指導・衛生委員会への出席・衛生教育)と、現地が必要な業務(作業場の巡視・原因調査)の線引きを示す図

産業医の仕事をオンラインで行うときの考え方は、厚生労働省の通達「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」(令和3年3月31日)にまとめられています。

業務オンライン通達の扱い
面接指導(長時間労働・高ストレス者など)できる医師が必要と認めた場合は直接対面
衛生委員会への出席できるオンラインで開催される委員会への出席
衛生教育できる情報通信機器を用いた遠隔での実施
作業場の巡視できない毎月1回(条件を満たせば2か月に1回)実地で
健康障害の原因調査・再発防止原則できない原則として事業場で実地に確認

少なくとも毎月1回(安衛則第15条で定める条件を満たす場合は少なくとも2月に1回)、産業医が実地で実施する必要があること

厚生労働省「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」(巡視について)

巡視だけは、オンラインに置き換えることができません。月1回か、条件を満たして隔月か。いずれにしても、担当する事業場には定期的に足を運ぶことになります。

オンラインで行う場合、事業者には衛生委員会での調査審議と労働者への周知、産業医が必要な情報を受け取れる仕組み、必要なときに産業医が実地で確認できる仕組み、近くの医療機関との連携などが求められています。

なお、認定産業医の研修(単位)をオンラインで受けられるかは別の話です。単位の集め方の記事で解説しています。

オンライン面談(面接指導)の要件

オンライン面接指導の要件を、使う機器・事業場の準備・担当する医師の望ましい条件の3つに分けて示す図

長時間労働者やストレスチェックの高ストレス者に行う面接指導については、別の通達「情報通信機器を用いた…医師による面接指導の実施について」があります。2020年11月の改正で、オンラインで実施しやすい形に見直されました。

面接指導を担当する医師

事業者は医師に、事業場の概要や業務内容、対象者の労働時間などの情報を提供しなければなりません。そのうえで、医師が次のいずれかに当てはまることが「望ましい」とされています。

  • その事業場の産業医である
  • 契約により、過去1年以上その事業場の労働者の日常的な健康管理を担当している
  • 過去1年以内に、その事業場を巡視したことがある
  • 過去1年以内に、その労働者に指導などを行ったことがある

使う機器と実施の方法

  • 医師と労働者が相互に表情、顔色、声、しぐさなどを確認でき、映像と音声の送受信が常時安定していること
  • 情報漏えいや不正アクセスを防ぐ情報セキュリティが確保されていること
  • 労働者にとって操作が難しくないこと
  • 実施方法を衛生委員会などで調査審議したうえで、事前に労働者に周知していること
  • 面接の内容が第三者に聞かれない環境など、プライバシーに配慮していること
  • 緊急の対応が必要なときに、近くの医師や事業場の産業保健スタッフが対応できる体制があること

映像で表情やしぐさを確認できることが前提です。音声だけの電話では、この要件を満たしません。

また通達は、面接指導を行う医師が必要と認める場合には、直接対面で行う必要があるとしています。オンラインにするか対面にするかを最後に判断するのは医師です。

Dr.瑛理

オンラインでも、ただビデオ通話をつなげばいいわけではないんですね。

角田拓実

企業側の準備が要る仕組みです。オンラインで依頼されたら、衛生委員会で決めてあるかを一度確認しておくと安心です。

私がオンラインにしている業務、訪問している業務

筆者がオンラインで行うことが多い業務、現地で行うことが多い業務、あえて対面を選ぶ面談の3つを示す図

私の担当先のうち、何かしらオンラインを挟んでいるのは半分くらいです。

オンラインで行うことが多いのは、面接指導と、健康相談(いわゆる産業医面談)です。衛生委員会はオンラインで参加している事業場もありますが、現地で出席することのほうが比較的多いです。巡視はオンラインではできないので、訪問しています。

面談の件数が多い事業場では、訪問日以外の面談をオンラインで入れることがあります。とはいえ、訪問日にまとめて面談をしてしまうことも全然あります。オンラインは、訪問を前提にした上で使い分ける道具という位置づけです。

使うツールは、自分の会社で用意するときと、企業が用意するときがあります。Zoom、Google Meetなど、企業によってさまざまです。

あえて対面を選ぶ場面

メンタルヘルス不調による休職や復職の面談、こじれてしまった問題など、配慮すべき事項が大きくなってくるときは、あえて直接お会いすることを選びます。

対面のほうが話の行き違いが起きにくく、本人や会社との関係のためにも良いと感じるからです。

つながらないときのこと

オンライン面談では、まれに映像がつながらないことがあります。急ぎの対応でやむを得ず電話でお話しすることもありますが、それは実務上の判断で、恒常的なものではありません。通達は映像で顔が見えることを前提にしているので、悩ましいところです。

つながらなかったときに日を改めるのか、対面に切り替えるのかを、企業の担当者とあらかじめ話しておくと慌てずに済みます。

角田拓実

配慮が要る面談ほど、対面の価値が上がります。オンラインで済ませるかどうかは、面談の中身で決めています。

自宅で完結する仕事はあるのか

自宅で完結しやすい仕事(面接指導だけの依頼・健康診断の結果の判定・顧問としての相談)と、嘱託産業医として事業場を担当する場合の違いを示す図

あります。私がこれまでに受けたことがあるのは、次のような仕事です。

  • 面接指導だけをオンラインで行う依頼
  • 健康診断の結果の判定業務
  • 産業医としてではなく、顧問として助言がほしいという相談

ただし、これらは単発や補助的な仕事です。嘱託産業医として事業場を担当するなら、巡視のための訪問は外せません。

「オンラインになって、遠くの案件も受けやすくなったのでは」と聞かれることもあります。私の実感では、あまり変わりません。結局は巡視で現地に行く必要があるので、近いか遠いかで案件の受けやすさが大きく変わることはないと感じています。

Dr.瑛理

自宅だけで完結するのは、単発の仕事が中心なんですね。

角田拓実

そうです。単発の仕事は経験を積む入口にもなります。嘱託の働き方とあわせて考えてみてください。

オンライン可の案件を選ぶときの注意点

オンライン可の産業医案件で避けたい条件と、受ける前に確認すること(巡視の頻度・訪問日とオンラインの分担・最初は訪問して企業を把握)を対比した図

オンラインでの対応を重視している企業も多い印象です。企業がそう希望していれば、紹介会社の案件もそれに従わざるを得ないことがあります。オンラインを使えること自体は、医師にとっても企業にとっても便利です。

ただ、受ける前に必ず確認してほしいのが現地訪問の頻度が、法令で決められた条件を満たしているかです。巡視は毎月1回、条件を満たしても2か月に1回は実地で行う必要があります。

訪問の頻度がそれを下回る条件だと、産業医として法令を守ることができません。紹介された案件でも、受けるかどうかは自分で判断してください。

オンラインのみで職場を見なくなる、という働き方は良くないと私は考えています。

地方在住・子育て中の先生へ

慣れてくれば、オンラインを組み合わせて効率よく回せるようになります。ただ、最初のうちはきちんと訪問して、企業の状況を把握したほうがいいと思います。

オンラインに期待しすぎず、基本は訪問、オンラインは例外的な処理と捉えておくとやりやすいはずです。

臨床と両立しながら産業医の時間を作る考え方は、別の記事にまとめています。

登録先を先に見ておきたい方は、以下の3社から始められます(広告)。どこも登録は無料で、産業医の求人も扱っています。求人は会社ごとに違うので、2〜3社に登録しておくと案件を比べやすくなります。希望の働き方は事実どおりに選んでください。

まとめ

今回は産業医の仕事をリモートでどこまでできるかに関して紹介を行いました。

  • 面接指導、衛生委員会への出席、衛生教育はオンラインでも行える
  • 作業場の巡視は毎月1回(条件を満たせば2か月に1回)実地で行う必要がある
  • オンライン面談は、映像で表情やしぐさを確認できること、衛生委員会での審議と周知、プライバシーと緊急時の体制が前提
  • 私の担当先では半分くらいでオンラインを挟むが、休職・復職など配慮が大きい面談はあえて対面
  • 自宅で完結するのは面接指導のみ・健診判定・顧問相談など単発の仕事が中心
  • 案件を選ぶときは、訪問頻度が法令の条件を満たしているかを自分で確認する

オンラインは訪問を置き換えるものではなく、訪問を軸にして使い分けるものです。できるところはオンライン、できないところは現地、と割り切ると無理なく続けられます。

角田拓実

以上、「産業医はリモートでできるか」についてまとめました。基本は訪問、オンラインは例外。この線引きを持って案件を選ぶことをオススメします。

産業医の仕事の探し方は、こちらの記事にまとめています。

参考にした一次資料(2026年10月確認)

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この記事を書いた人

産業医の角田拓実です。医局で多忙な業務をこなす中で自分の時間を確保できる働き方を求めて産業医に転向。コネクションも業務経験もない状態から嘱託産業医を始め、株式会社豊田自動織機の専属産業医を経て、現在は株式会社サンポチャートを設立し、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっています。このサイトでは、産業医になりたい医師が最初の1社目に出会うまでの手順と、紹介会社・働き方の比較を実体験から書いています。
資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー
著書:『40代から始めるあなたの予防医学』(自由国民社)、『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社)

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