日本医師会認定産業医の取り方2026。集中講座の申し込み・抽選・MAMIS登録まで現役産業医が解説
こんにちは。産業医の角田拓実です。
今回は「日本医師会認定産業医をどうやって取るか」について、2026年の最新の手順で解説していきます。
産業医として企業と契約するには、法令で決められた要件を満たす必要があります。勤務医の先生が現実的に目指すのは、ほとんどの場合日本医師会認定産業医です。
ただ、この数年で取り方の事情は大きく変わりました。集中講座は人気が高く抽選で落ちることが珍しくありません。2025年4月からは単位の管理がMAMIS(医師会会員情報システム)に移り、紙の単位シールが廃止されました。
ネットで見つかる取り方の記事には、単位シールや研修手帳を前提にした古い説明もまだ残っています。この記事では、一次資料で確認した2026年時点の情報と、私が実際に集中講座で取得したときの経験をまとめます。
Dr.瑛理認定産業医を取りたいんですが、集中講座の抽選やMAMISの話を聞いて、何から始めればいいのか分からなくなりました。



順番に整理すれば難しくありません。まず制度の全体像から見ていきましょう。
日本医師会認定産業医とは
産業医になれる医師の要件は、労働安全衛生規則第14条第2項に定められています。日本医師会などが行う研修の修了、産業医科大学の卒業、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格などです。
このうち、勤務医の先生が働きながら取りやすいのが日本医師会認定産業医です。試験はなく、所定の研修を受けて単位をそろえ、申請すれば認定されます。
産業医の資格にはほかにも種類があり、それぞれの特徴は別の記事で比較しています。この記事は日本医師会認定産業医の取り方に絞って書きます。


必要なのは基礎研修50単位。内訳に注意
認定に必要なのは、産業医学基礎研修50単位以上です。1時間の研修が1単位なので、合計50時間以上の研修を受けることになります。
50単位はただ数をそろえればよいわけではなく、3つの区分ごとに必要な単位数が決まっています。
| 区分 | 必要な単位 | 内容 |
|---|---|---|
| 前期研修 | 14単位以上 | 入門的な研修。総論2、健康管理2、メンタルヘルス1、健康保持増進1、作業環境管理2、作業管理2、有害業務管理2、産業医活動の実際2の8項目すべてが必要 |
| 実地研修 | 10単位以上 | 職場巡視などの実習、作業環境測定の実習など実務的な研修 |
| 後期研修 | 26単位以上 | 地域の特性を考慮した実務的・やや専門的・総括的な研修 |
このうち取りにくいのは前期研修と実地研修です。後期研修は全国で頻繁に開かれていますが、前期研修は8項目をそろえる必要があるうえに開催の回数が少なく、実地研修も受け入れの枠が限られています。



50単位の数より、前期と実地をどうそろえるかが問題なんですね。



そうです。後期研修はいつでも集められますが、前期と実地はそうはいきません。ここで取り方が分かれます。
取り方は2つ。集中講座か、地域の研修を積み上げるか


50単位の集め方は、大きく2つあります。
| 集中講座 | 地域の研修を積み上げる | |
|---|---|---|
| 期間 | 6〜7日間で50単位 | 数か月〜数年 |
| 前期・実地 | まとめて取れる | 開催が少なく、計画が必要 |
| 費用(2026年度の例) | 約3万〜21万円(主催者と医師会の所属で変わる) | 1回数千円〜1万円台の研修が多い |
| 申し込み | 抽選が多く、倍率が高い | 先着順が多い |
| 向いている人 | まとまった休みを取れる人、早く取りたい人 | 連休が取れない人、急がない人 |
確実に、早く取るなら集中講座です。取りにくい前期研修と実地研修が、1回の受講で過不足なくそろいます。
一方で、集中講座は1週間ほど休みを取る必要があり、抽選に当たらないと受けられません。地域の研修で少しずつ集める方法は、別の記事で詳しく解説しています。


私は旧東京医科歯科大学の集中講座で、夏休みに取りました
私は旧東京医科歯科大学(現在の東京科学大学)の集中講座で、夏休みを使って認定産業医を取りました。
集中講座は1週間ほど毎日朝から夕方まで講義と実習が続き、それで50単位がそろいます。受講そのものは数日間で終わるので、取るまでの負担は思ったより小さかったです。
ただ、申し込みから認定までを通して見ると、半年くらいかかりました。申し込み、抽選の結果待ち、受講、申請、認定証の到着と、段階ごとに待つ時間があるからです。
集中講座の講師は、大学の産業衛生の先生、企業の専属産業医、労働衛生コンサルタントなど幅広い顔ぶれです。現場で実際に何をしているかを一通り聞けたのは、資格以上に役に立ちました。



夏休みの1週間で取り切れるのが集中講座の良さです。地域の研修をばらばらに集めるより、結果的に早く確実でした。
集中講座の1週間で学ぶこと
集中講座で何を学ぶのか、2026年度の東京科学大学の研修会のプログラムを例に紹介します。
- 1〜2日目(前期研修):産業医の職務の総論、作業管理、産業医活動の実際、健康管理、職場のメンタルヘルス対策、健康保持増進、有害業務管理、作業環境管理
- 3〜4日目(後期研修):労働衛生行政、産業医に必要な法律知識、過労死の医学的側面、職場の腰痛対策、結核などの感染症対策、女性労働者の健康管理、メンタルヘルス概論、ストレスチェックの実施、化学物質の自律的管理など
- 5日目(実地研修):作業環境管理と作業管理の1日実習。感染症対策や過重労働面談の事後措置の事例検討、保護具、作業環境測定、熱中症の予防など
- 6〜7日目:事務職場での職場巡視、疫学的な評価、疲労対策や食事指導(実地)、健康診断の事後措置、生活習慣病対策など
臨床ではほとんど触れない作業環境管理、有害業務、労働衛生の法令をまとめて学べるのが集中講座の価値です。実際に産業医として働き始めると、職場巡視や衛生委員会でこのあたりの知識がそのまま問われます。



1週間で、産業医の仕事の全体を一通り学べるんですね。
2026年度の主な集中講座(日程・費用・申し込み)
基礎研修50単位をまとめて取れる主な集中講座の、2026年度の要項を一次資料から整理しました。
| 主催・会場 | 日程 | 定員 | 受講料 | 申し込み |
|---|---|---|---|---|
| 産業医科大学 夏期集中講座(北九州国際会議場) | 第1クール 7/27〜8/1、第2クール 8/3〜8/8(各6日間) | 各390名(計780名) | 160,000円 | 4/1〜4/7。抽選(定員の3倍を超えると期間内に締め切ることあり) |
| 東京都医師会・東京科学大学医師会(東京科学大学) | 8/11〜8/17(7日間連続) | 300名 | 30,000〜110,000円(所属医師会で変わる) | 6/15〜6/19。抽選、6/23通知予定。外れると自動でキャンセル待ち |
| 産業医科大学 首都圏集中講座(つくば国際会議場) | 第1クール 12/7〜12/12、第2クール 2027年2/14〜2/19(各6日間) | 各320名(計640名) | 150,000円(日医会員)/210,000円(非会員) | 8/17〜9/13。先着1,280名を受け付け、1年以内に産業医活動を始める人を優先して抽選 |
受講料は主催者と医師会の所属で大きく変わります。たとえば東京科学大学の研修会は、同大学医師会員なら3万円、非医師会員なら11万円です。ここに交通費と宿泊費が加わります。
この3つ以外にも、各地の医師会や大学が集中型の研修を開くことがあります。都道府県医師会の研修案内もあわせて確認しておくと、選択肢が増えます。



申し込みの時期が講座ごとにばらばらなんですね。春から見ておかないと間に合わないかもしれません。



そうなんです。受けたい年の前の冬から春には、募集要項が出ていないか確認しておきましょう。
もう一つの道:産業医科大学の産業医学基本講座
集中講座とは別に、産業医科大学の産業医学基本講座という選択肢もあります。数か月かけて産業医学を体系的に学ぶ講座で、修了すると産業医学ディプロマ(産業医学基本講座修了認定書)が授与されます。
ディプロマは、それだけで法令上の産業医の要件を満たします。そのうえで日本医師会認定産業医も申請できるのがポイントです(修了から5年以内に1回限り)。ディプロマには更新の手続きがないので、更新のない資格と日本医師会認定産業医の両方を一度に手に入れられます。
| 本学開催(北九州) | 東京開催 | |
|---|---|---|
| 2026年度の期間 | 4/7〜5/20 | 6/2〜10/15(火・木の18:30〜21:40と隔週土曜) |
| 定員 | 約100名 | 約35名 |
| 受講料 | 230,000円 | 550,000円 |
| 申し込み(2026年度) | 2025/12/1〜2026/1/30 | 2025/12/1〜2026/3/31 |
1週間ほどの集中講座に比べると時間はかかります。その代わり、第一線の講師の先生たちと腰を据えて学べるのは大きな魅力です。東京開催は平日の夜と土曜が中心なので、勤務を続けながら通う形になります。



時間はかかっても、更新のいらない資格と認定産業医が両方取れるのは魅力ですね。



講師や同期とのつながりも財産になります。本気で産業医を続けるなら、選択肢に入れておいてください。
申し込みから認定までの流れ
集中講座を例に、申し込みから認定証が届くまでの流れをまとめます。
- MAMISのマイページを登録する(医師会の会員・非会員を問わず必須)
- 集中講座に申し込む(受付期間は数日〜1か月ほど。多くは抽選)
- 抽選の結果を受け取り、期限内に受講料を払う(東京科学大学の例では、振込案内の到着から10日以内)
- 受講する(遅刻・中抜け・早退した時間の単位は付与されない)
- 単位がMAMISに登録されたことを確認する
- 都道府県医師会を通じて認定を申請する
- 認定証が届く
MAMISの登録は申し込みより前に
2025年4月7日以降に開かれる産業医研修では、紙の単位シールは発行されません。研修の主催者が受講者の情報をMAMISに登録し、受講者はMAMISのマイページで取得した単位を確認します(東京産業保健総合支援センターの案内)。
認定の申請
50単位がそろったら、都道府県医師会を通じて日本医師会に認定を申請します。日本医師会のFAQでは、申請は研修の最終受講日から5年以内に1回限りとされています(日本医師会 認定産業医制度FAQ)。



MAMISの登録は一番最初にやってください。単位がつかなかったら、1週間の受講が無駄になってしまいます。
抽選に落ちたときの選択肢
集中講座は人気が高く、抽選で落ちることはしばしばあります。落ちたときに考えられる選択肢を挙げておきます。
- キャンセル待ちを待つ:東京科学大学の研修会のように、抽選に外れると自動でキャンセル待ちになる講座がある
- 別の集中講座に申し込む:受付時期が講座ごとにずれているので、春に落ちても夏・秋の募集に申し込める
- 前期研修と実地研修を先に地域で探す:取りにくい区分を見つけたら優先して押さえ、後期研修はあとで集める
- 産業医学基本講座を検討する:時間と費用はかかるが、ディプロマと日本医師会認定産業医の両方につながる
- 別の資格で要件を満たす:労働衛生コンサルタント(保健衛生)に合格すれば、更新のない産業医資格になる
労働衛生コンサルタントは試験の難しさがありますが、集中講座の席が取れずに受験を考える先生も増えています。


MAMISは使いにくい。それでも厳しくなった理由
正直に言うと、私はMAMISを非常に使いにくいと感じています。マイページを登録して、申請して、ようやく単位がつく。紙のシールを貼るだけだった頃より、手間は確実に増えました。
ただ、こうなった理由ははっきりしています。2023年9月、日本医師会認定産業医の研修の単位シールがフリマサイトで売られていたことが分かりました。厚生労働省は日本医師会に、再発防止策を含む対応を速やかに取るよう指示しています。
単位は、日本医師会認定産業医制度において、法令上の産業医となるために必要な知識を身に着けた証、または認定産業医として研鑽を積んだ証として、受講者本人に付与されるもの
厚生労働省「日本医師会認定産業医制度研修会の単位シール販売について」(2023年9月25日)



単位の売買なんてあったんですね。MAMISの手間は、その結果なんだ。



そういうことです。単位は受けた本人のものです。譲ったり売ったりは絶対にしないでください。
更新は5年で20単位。取ってしまえば維持は楽
認定産業医の有効期間は5年です。更新には、5年間で20単位以上の生涯研修が必要です。
- 更新研修:1単位以上
- 実地研修:1単位以上
- 専門研修:1単位以上
- 合計20単位以上(WEB研修は更新時に5単位まで使える)
取得のときの50単位に比べれば、5年で20単位はかなり楽です。生涯研修は各地の医師会や産業保健総合支援センターで頻繁に開かれていて、産業保健総合支援センターの研修は無料のものもあります。
なお、2025年4月以降の研修で取った単位はMAMISに記録されます。更新の時期が近づいたら、マイページで単位の区分がそろっているかを確認しておきます。



取るのは大変ですが、維持は5年で20単位です。時間が取れるうちに取っておくと、後が楽になります。
認定産業医の取り方でよくある疑問
オンラインの研修だけで取れますか?
新規に認定を取るための基礎研修は、原則として会場で受ける研修です。WEB研修は更新のときに5単位まで使えるという扱いなので、オンラインだけで50単位をそろえることはできません。
医師会に入っていなくても取れますか?
取れます。MAMISの登録は医師会の会員・非会員を問わず必要で、研修も非会員で受けられます。ただし受講料は会員のほうが安く設定されていることが多く、東京科学大学の研修会では会員と非会員で最大8万円の差があります。
研修医や専攻医のうちに取れますか?
集中講座の対象は「認定産業医を希望する医師」などとされているものが多く、医師であれば申し込める講座が一般的です。ただし受講資格は講座ごとに要項で確認してください。研修中は連休が取りにくいので、勤務先の休暇の取り方とあわせて計画します。
資格を取れば、すぐに産業医の仕事はありますか?


まとめ
今回は日本医師会認定産業医の取り方(2026年版)に関して紹介を行いました。
- 必要なのは基礎研修50単位(前期14・実地10・後期26)。ボトルネックは前期研修と実地研修
- 確実に早く取るなら集中講座。ただし人気が高く、抽選で落ちることはしばしばある
- 2026年度の主な集中講座の受付は4月・6月・8〜9月。次は2027年度の募集を狙う
- 時間と費用をかけられるなら、産業医科大学の産業医学基本講座でディプロマと認定産業医の両方を取る道もある
- 2025年4月から単位はMAMISで管理。申し込み前にマイページを登録する
- 申し込みから認定まで、私の場合は半年ほどかかった
- 更新は5年で20単位。若いうちに取っておくと維持は楽



以上、「日本医師会認定産業医の取り方」についてまとめました。資格の準備と並行して、仕事の探し方も早めに見ておくことをオススメします。
資格を取った後の仕事の探し方は、こちらの記事にまとめています。



