労働衛生コンサルタントは更新不要の産業医資格。医師の受験資格と免除

  • URLをコピーしました!

この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれる場合があります。紹介する各社の登録は無料で、記事の内容は運営者の経験と公開情報に基づいて作成しています。

目次

労働衛生コンサルタントは更新不要の産業医資格。医師の受験資格と免除

こんにちは。産業医の角田拓実です。

今回は「労働衛生コンサルタントって産業医の永久資格なんですか?」「日本医師会の認定産業医を更新しなくてよいのですか?」という質問に回答をしていきます。

結論からいうと「医師免許と労働衛生コンサルタント(保健衛生)の資格があれば、更新なしで産業医の資格をずっと維持できます。」

また、「日本医師会の認定産業医とは別の資格なので日本医師会の認定医を維持するのであれば更新は必要です」という回答になります。

あわせて、医師が受験するときの受験資格と筆記試験の免除、認定産業医の更新をしなかったときにどうなるかも整理します。

今回は独立系産業医として活動する筆者が詳しく解説していきますので最後までチェックしてみてください。

Dr.瑛理

労働衛生コンサルタントを取れば、認定産業医の更新はもうしなくていいんですか?

角田拓実

そこは分けて考える必要があります。順番に見ていきましょう。

結論:医師免許+労働衛生コンサルタント(保健衛生)で、更新のいらない産業医資格になる

医師が労働衛生コンサルタント(保健衛生)を受験・合格すると産業医の要件を満たし、名簿登録で名称を名乗れる流れの図

労働衛生コンサルタントとは?

労働衛生コンサルタントは労働衛生に関する国家資格の一つです。

労働衛生コンサルタントは「厚生労働大臣が認めた労働安全・労働衛生のスペシャリストとして、労働者の安全衛生水準の向上のため、事業場の診断・指導を行う国家資格(士業)です。」とされています。※労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント|厚生労働省より

労働衛生コンサルタントといっても医師が取得することが多い「保健衛生」以外にも「衛生工学」といった分野も存在しています。

併せて安全に係わる労働安全コンサルタントの資格もありますのでバラエティは多いです。

角田拓実

労働衛生のスペシャリストが労働衛生コンサルタント資格です。職場の環境改善の担い手です。

労働衛生コンサルタントは産業医の資格として使える

労働衛生コンサルタントに医師が合格すれば産業医として活動できるようになります。

労働衛生コンサルタントは労働安全衛生法にも産業医として活動する際の要件に定められています。

労働安全衛生法と労働安全衛生規則から引用させていただきます。

(労働安全衛生法13条第2項)
産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
(労働安全衛生規則14条第2項)
法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修で
あつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
二産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにお
いて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
三労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
四学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者
五前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

引用:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索、労働安全衛生規則 | e-Gov 法令検索

上記のように保健衛生分野の労働衛生コンサルタントに合格することで産業医としての要件を満たすことができます。

なお、労働衛生コンサルタントは合格後に労働衛生コンサルタント名簿に登録することで名称を名乗ることができますが、産業医としての要件は「合格」のみでよいことは覚えておきましょう。

角田拓実

労働衛生コンサルタント試験に合格することで産業医として働くための要件を満たすことが可能です。

要件を満たしたあと、専属・嘱託のどちらで働くかと報酬の目安は、こちらで整理しています。

医師の「免除」は3種類。受験資格・筆記試験・認定産業医を切り分ける

医師が労働衛生コンサルタントを受けるとき、「免除」という言葉が出てくる場面は3つあります。

それぞれ免除される中身が違うので、先に整理しておきます。

Dr.瑛理

医師なら試験が免除されると聞いたんですが、筆記も口述も受けなくていいんですか?

免除されるもの対象内容
受験資格の実務経験医師(医師国家試験に合格した者)経験年数の条件なしで受験できる(規則11条2号)
筆記試験の2科目医師(下の講習を修了していない人を含む)「労働衛生一般」「健康管理」が免除。筆記で受けるのは「労働衛生関係法令」だけ(規則13条)
筆記試験の全科目厚生労働大臣が指定する講習を修了した医師(日本医師会の産業医学講習会、産業医科大学の産業医学基本講座)筆記試験がすべて免除され、口述試験から受ける(規則13条・14条)

一方で、日本医師会認定産業医の資格を持っているだけでは、筆記試験は免除されません。全科目免除の条件は、認定産業医かどうかではなく、指定された講習を修了したかどうかです。

どの免除を使っても、口述試験は全員が受けます。口述の科目は「労働衛生一般」と「健康管理」の2つです(規則14条)。

引用:労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則 | e-Gov 法令検索

角田拓実

医師は筆記のうち法令だけ受ければよく、指定の講習を修了していれば筆記はまるごと免除です。認定産業医の資格だけでは免除にならない点に注意しておきましょう。

医師の受験資格。実務経験なしでも受けられる

医師は経験年数の条件なしで受験できる

労働衛生コンサルタントの試験には、それぞれ受験資格のハードルが設けられており経験年数などの縛りがあります。

たとえば衛生管理者として受験する場合は、10年以上その職務に従事した経験が必要です。

一方で医師であれば労働衛生コンサルタント(保健衛生)の受験資格を持っていますので、経験年数などとは関係なく受験することが可能です。

医師の受験資格を定めた規則11条2号は「医師国家試験に合格した者」などを挙げているだけで、実務経験の年数は条件になっていません。

口述試験の科目は労働衛生一般と健康管理

ただし、筆記試験のほかに口述試験もあり、合格は決して簡単ではありません。

口述試験の科目は「労働衛生一般」と「健康管理」です。経験年数の条件はなくても、2科目の知識を口頭で説明できる準備は欠かせません。

Dr.瑛理

実務経験が少なくても受験できるのは心強いですね。

角田拓実

受験のハードルは低いですが、口述の2科目はしっかり準備しておきましょう。

受験資格に実務経験の年数は要りませんが、資格を取ったあとに最初の1社をどう決めるかは別の問題です。未経験から1社目を決める道は、こちらにまとめています。

試験は筆記と口述の2段階。令和7年度の合格率

労働衛生コンサルタント試験は筆記と口述の2段階で、令和7年度の保健衛生の合格率は筆記30.5%・口述43.4%、筆記には免除の道があることを示す図

試験の難易度は?

労働衛生コンサルタントの試験難易度はどうでしょうか?

労働衛生コンサルタント試験は労働衛生分野における難関試験ということもあり難易度は高いです。

令和7年度の保健衛生区分では、筆記試験の合格率は30.5%、口述試験の合格率は43.4%でした(安全衛生技術試験協会の公表値)。

協会が算出した最終的な合格率は40.0%で、受験者の半数以上が不合格です。

筆記試験が全科目免除になった方も、口述試験は受ける必要があります。口述の合格率(令和7年度、保健衛生区分)は43.4%なので、免除があっても油断はできません。

なかなか合格が難しくリピート受験をされる先生も少なくないようです。

角田拓実

合格難易度は決して易しくありません。きちんと勉強を行い労働衛生コンサルタントとしての知識や立ち振る舞いを身に着ける必要があります。

筆記試験と口述試験がある?

労働衛生コンサルタント試験には筆記試験と面接式の口述試験が存在しています。

医師の場合、筆記試験のうち「労働衛生一般」「健康管理」は免除され、受けるのは「労働衛生関係法令」だけです。労働安全衛生法の条文に関して詳しく勉強が必要です。

また、日本医師会が主催する産業医学講習会を修了すると、筆記試験が全科目免除になります。

※産業医学講習会は毎年5月ごろに募集され、7月ごろに3日間の講習会が行われるものです。受講できれば筆記試験が免除ですので一気に合格が近くなります。

第55回産業医学講習会の申込受付開始について | 日本医師会 全国医師会産業医部会連絡協議会

また、産業医科大学の産業医学基本講座を修了して産業医学ディプロマを取得している場合も、同様に筆記試験が全科目免除になります。なお、日本医師会認定産業医の資格だけでは免除になりません。

口述試験では「労働衛生一般」と「健康管理」の2科目について、試験官から口頭で問われます。

口述試験に合格し登録を行うことで晴れて労働衛生コンサルタントの資格を得ることができます。

角田拓実

試験対策をしっかりと行うことで、実務家としての力が高まっていく資格です。産業医としてレベルアップを目指すためにチャレンジしてみるとよいでしょう。

これから産業医の仕事を始める先生は、資格の準備と並行して、最初の1社をどう探すかも考えておきましょう。経験がなくても応募できる産業医求人の見つけ方は、こちらにまとめています。

「永久資格」の正しい理解と、認定産業医の更新をしなかったとき

医師免許+労働衛生コンサルタントと医師免許+日本医師会認定産業医は別資格で、コンサル取得で認定産業医の更新は免除されないことを示す図

労働衛生コンサルタントは更新不要の産業医資格

労働衛生コンサルタントは産業医の永久資格と言われることがありますが本当でしょうか?

この点に関しては正しく理解を行うことが大切です。

医師で労働衛生コンサルタント(保健衛生)のものは産業医の要件を満たします。

医師免許も労働衛生コンサルタント資格も更新は必要ありませんので「生きている限りは産業医の資格を有する」ということになります。※現段階の法令です

角田拓実

労働衛生コンサルタントの資格があれば産業医を行っていくことに特に年限は求められません。

日本医師会認定産業医の更新が必要なくなる?

また「日本医師会認定産業医の更新が必要なくなるか?」という質問を受けることも多いです。

ここに関しても労働衛生コンサルタントと日本医師会認定産業医を切り分ける必要があります。

医師免許+労働衛生コンサルタントで産業医としての要件を満たします。
医師免許+日本医師会認定産業医で産業医としての要件を満たします。

これらの概念は並列の関係にあります。それぞれ全く別の資格であると考えておくとよいでしょう。

したがって、労働衛生コンサルタントの資格を取得したからといって日本医師会認定産業医の更新が免除されるわけではありません。

一方で、労働衛生コンサルタントの資格を有していても、学会などの参加で20単位が集まることが多いため日本医師会認定産業医の資格を維持している先生も多いです。

角田拓実

医師会認定産業医≠労働衛生コンサルタントであることに留意しておきましょう。更新の免除ではありません。

認定産業医の更新をしないとどうなる?

Dr.瑛理

認定産業医の更新をしなかったら、産業医の仕事はできなくなるんですか?

日本医師会の制度では、認定産業医の有効期間は5年です。更新を受けないと、認定産業医の認定は失効します。

ただ、法令が産業医に求めているのは、厚生労働大臣が指定する者の行う研修を修了していることです(労働安全衛生規則14条2項1号)。そのため私は、失効した後も研修を修了した者として産業医の選任は続けられると理解しています。

この扱いを厚生労働省がはっきり示した文書は、私が調べた範囲では見つかっていません。選任の届け出で迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。

とはいえ、企業や紹介会社からは有効な認定を求められることが多いです。認定産業医として活動を続けるなら、更新しておくのが無難です。

一方で、労働衛生コンサルタント(保健衛生)に合格していれば、認定産業医の更新とは関係なく、合格したことで産業医の要件を満たします(労働安全衛生規則14条2項3号)。

認定産業医の更新に必要な単位や手続きは、こちらにまとめています。

角田拓実

認定産業医は5年ごとの更新、労働衛生コンサルタントは更新なし。この違いを押さえておきましょう。

更新の単位の集め方や、失効したときの実務は、認定産業医の更新の記事にまとめています。

労働衛生コンサルタントを取るメリットと事務所の登録

労働衛生コンサルタントを取るメリットとして、知識と言語化の力、同業者間の信頼、事務所登録による開業の3つを並べた図

労働衛生に関わる知識や考え方が身につく

労働衛生コンサルタントの受験をすることは、産業医の資格以外にメリットはあるでしょうか?

大きなメリットとしては労働衛生コンサルタントの資格を取る過程で労働衛生に関わる知識を身に着けることができます。

筆記試験では産業保健に関わる法令への理解が深まります。

法令は産業医としての業務を行う上で基本となる部分です。日常の実務を行う上で大きな力になると考えます。

口述試験では労働衛生に関わる知識全体を学ぶことになります。

ただ暗記するだけではなく、知識を言語化し労働衛生に関わる内容を分かりやすく伝える技術も身についていきます。

こちらの言語化の練習も職場の担当者や従業員にアドバイスを行う際に有益です。

角田拓実

労働衛生コンサルタントの勉強を通して現場で働く実務家としての力がアップしていきます。日常業務のレベルアップを目指しましょう。

同業者間でも信頼性アップ

労働衛生コンサルタントの取得者数が増えているとはいえ、労働衛生の専門家としての立ち位置は健在です。

ベテランの先生方でも取得している先生は多いです。

アピールすることはあまりありませんが、名刺に書いてあると信頼感がアップする傾向はあるでしょう。

ステップアップする意味でも労働衛生コンサルタントの資格を取得することは大切です。

労働衛生コンサルタント事務所の登録

労働衛生コンサルタントは、名称を用いて報酬を得て、事業場の衛生についての診断・指導を行うことを業とする資格です(労働安全衛生法81条2項)。

労働衛生コンサルタント事務所を作り、報酬を頂いたうえで職場の業務環境の向上を目指していくことがうたわれています。

労働衛生コンサルタントに合格後、自分自身の労働衛生コンサルタント事務所を登録することになります(名簿の登録事項に事務所の名称・所在地が含まれます。労働安全衛生法84条、コンサルタント規則16条)。

こちらに関してはあくまで労働衛生コンサルタントの事務所を開業ですので、産業医とは別枠ととらえておくとよいでしょう。

角田拓実

開業の予定や実体がなくても事務所名の登録が必須になっています。労働衛生コンサルタントの性質を表しているのでしょう。

産業医として独立して事務所を作る話は、こちらにまとめています。

資格を活かせる案件の探し方は、こちらにまとめています。

労働衛生コンサルタントのよくある疑問

医師免許がなくても、合格すれば産業医になれますか?

なれません。事業者は「医師のうちから」産業医を選任すると決められています(労働安全衛生法13条1項)。

医師免許の無いものが労働衛生コンサルタントの資格を取得しても産業医になることはできません。

名簿に登録しないと産業医になれませんか?

産業医の要件は「労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの」です(労働安全衛生規則14条2項3号)。名簿への登録は産業医の要件に入っていません。

登録が必要になるのは、労働衛生コンサルタントとして名乗り、仕事をする場合です(労働安全衛生法84条)。

日本医師会認定産業医を持っていれば、筆記試験は免除されますか?

免除されません。筆記試験が全科目免除になるのは、日本医師会の産業医学講習会や産業医科大学の産業医学基本講座など、厚生労働大臣が指定する講習を修了した医師です(コンサルタント規則13条)。

講習を修了していない医師も「労働衛生一般」「健康管理」は免除されるので、筆記で受けるのは「労働衛生関係法令」だけです。

角田拓実

迷いやすいのは「合格」「登録」「認定」の違いです。それぞれ別の手続きだと覚えておきましょう。

認定産業医と労働衛生コンサルタントを含め、産業医になるまでの全体像はこちらです。

まとめ

今回は労働衛生コンサルタントに関して解説を行ってきました。

  • 医師免許+労働衛生コンサルタント(保健衛生)の合格で、更新のいらない産業医の要件を満たす
  • 医師は実務経験の年数なしで受験でき、筆記は「労働衛生関係法令」だけ。指定の講習を修了していれば筆記は全科目免除
  • 口述試験は全員が受ける。令和7年度の保健衛生の最終合格率は40.0%
  • 日本医師会認定産業医とは別の資格。コンサルを取っても認定産業医の更新は免除されず、更新しないと認定は失効する

試験に合格する必要があるため難易度は高めになってきますが、しっかりと勉強をすることで日常業務にも活きてきます。

産業医としてさらに資格を取得したい先生はまずは労働衛生コンサルタント資格を目指してみるのはいかがでしょうか?

角田拓実

労働衛生コンサルタントと認定産業医の違いをまとめました。更新のいらない資格を一つ持っておくことをオススメします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

産業医の角田拓実です。医局で多忙な業務をこなす中で自分の時間を確保できる働き方を求めて産業医に転向。コネクションも業務経験もない状態から嘱託産業医を始め、株式会社豊田自動織機の専属産業医を経て、現在は株式会社サンポチャートを設立し、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっています。このサイトでは、産業医になりたい医師が最初の1社目に出会うまでの手順と、紹介会社・働き方の比較を実体験から書いています。
資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー
著書:『40代から始めるあなたの予防医学』(自由国民社)、『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社)

コメント

コメントする

目次