産業医と臨床医の掛け持ちは可能?両立のコツとマインドの違い

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目次

産業医と臨床医の掛け持ちは可能?両立のコツとマインドの違い

こんにちは。産業医の角田拓実です。

今回はよく質問を受ける「臨床医と産業医の掛け持ちは可能ですか?」という質問に答えていきます。

結論としては、臨床と産業医の掛け持ちはできます。ただし、嘱託産業医か専属産業医かで扱いが変わります。

組み合わせ掛け持ち
臨床(病院・クリニック)× 嘱託産業医できる(勤務先の兼業のルールの範囲で)
臨床 × 専属産業医勤務先の企業が外勤を認めていればできる
専属産業医 × ほかの事業場の嘱託産業医通達の要件をすべて満たす場合に限られる
嘱託産業医を複数社できる(訪問日が重ならないように組む)

嘱託産業医を何社まで掛け持ちできるかは、嘱託産業医の業務内容と掛け持ちの記事で解説しています。

今回はその理由と、掛け持ちするときの時間の作り方、メリット・デメリットに関して解説を行っていきます。

また覚えておきたい産業医と臨床医の違いに関しても解説を行います。

臨床医の先生の産業医の業務に興味のある方はぜひチェックしてください。

Dr.瑛理

外来を続けながら、産業医の仕事もできるのでしょうか?

角田拓実

臨床の知識を持った先生が職場に来てくださると、企業にとっても従業員にとっても心強いと感じます。

産業医と臨床を掛け持ちできる組み合わせ

産業医と臨床医の兼任が可能なケース

嘱託産業医と臨床は掛け持ちできる

嘱託産業医と臨床医の業務の掛け持ちは可能です。

嘱託産業医を行う多くのケースでは病院やクリニックに勤める先生が、地域からの依頼を受けて産業医業務に臨むことがほとんどです。

内科や精神科等自身の専門性を応用しながら業務に当たる先生もいらっしゃいます。(もちろん専門性に限らずあらゆる事例に対応する必要はありますが。)

角田拓実

地域の開業医の先生が地域の産業医業務を担ってきた歴史があります。

専門が精神科・心療内科の先生なら、精神科・心療内科の先生が産業医をするときの強みと気をつけることも参考にしてください。

勤務医が嘱託やスポットを副業として始める手順は、こちらの記事で解説しています。

専属産業医も臨床と掛け持ちできる

専属産業医に関しても臨床医との掛け持ちが可能です。

専属産業医を週3日、臨床医を外来で週2日業務を行うことも非常に多いです。

企業にとっても医師が臨床医としての能力が低下することは懸念している背景もあるため、外勤を認めることが多いです。

専属産業医がほかの事業場の嘱託を掛け持ちするのは限られる

一方で、専属産業医がほかの事業場の嘱託産業医を掛け持ちすることは大きく制限されています。

兼務が認められるのは、下請など労働衛生管理を一体で行う事業場で、労働の態様が似ている、対象の労働者が合計3,000人以下、衛生委員会などで調査審議している、といった要件をすべて満たす場合に限られます(平成9年基発第214号、令和3年基発0331第5号で改正)。

角田拓実

専属産業医でも臨床の外勤は勤務先が認めればできますが、ほかの事業場の嘱託を兼ねるのは通達の要件を満たす場合に限られます。

掛け持ちの時間の作り方。訪問日と1日の組み方

臨床と掛け持ちするときに一番の壁になるのは、時間の作り方です。

嘱託産業医の訪問は月1回〜隔月1回が多く、2時間の訪問なら面談1時間・職場巡視30分・衛生委員会30分がよくある流れです。

企業は基本的に平日の日中しか動いていないので、平日の日中に時間を作るしかありません。勤務医の先生なら、研究日や外勤の日など、勤務先から与えられた時間を使うのが現実的です。

最初は午前1コマ・午後1コマと考えて、1コマで1社を回るくらいから始めると無理がありません。1〜2コマ空けておくと、急な相談にも対応しやすくなります。

企業は日程の変更が難しく、「病院が忙しいので遅れます」はあまり通じません。特に信頼関係ができる前は、時間に余裕を持って組んでおきましょう。

勤務先の兼業のルール(内規)の確かめ方や、勤務医が副業として始める手順は産業医のバイト・副業の始め方で、訪問日2時間の具体的な流れは嘱託産業医の1日・1か月の流れで解説しています。

掛け持ちしやすいのは、訪問が月1回〜隔月1回で、勤務先から移動しやすい案件です。産業医の求人は公開で募集されることが多くないので、紹介会社の担当者に「臨床を続けながら、月1回の訪問でできる案件を増やしたい」と伝えて探すのが早いです。求人票で見る条件は嘱託産業医の求人の探し方と5つの条件で解説しています。

角田拓実

産業医の仕事は少しずつ増えていきます。まずは平日のコマを一つ空けるところから始めてみてください。

産業医と臨床医のマインドセットの違い

産業医と臨床医のマインドセットの違い

臨床医と産業医では求められる、マインドセットが異なります。マインドセットを意識して切り替えなければ産業医としての業務に支障が現れるケースが多いです。

別記事で詳しく紹介しますが、ここではマインドセットに関して簡単に触れておきます。

臨床医は患者さんの生命・治療がファースト

臨床医は当然ですが、患者さんの命を救うために最善の行動をとっていきます。

もちろん社会的背景を考慮する場合もありますが、基本的には救命が最優先です。

これは医師のふるまいとして当然のことですが、実は産業医の業界では異なるのです。

Dr.瑛理

産業医と臨床でマインドセットが異なるのですね。

産業医は病気の従業員だけでなく会社の状況も考慮

産業医は企業に雇われ職場の衛生管理を受け持つ医師です。

一方で、産業医は従業員に対して全力でコミットをするわけではありません。

病気によって仕事に支障が出ないか?仕事によって体調に問題が出ないか?という点が大切です。体調不良が予見される従業員がいかにして働くことができるかという点に関してサポートは当然行います。

一方で、会社が訴えられたりするようなリスクを抱える場合は就業制限やドクターストップをかけるような対応を行います。産業医にとっては会社の支援を行うことも大切な業務なのです。

もちろん病気を持った従業員のサポートや予防医学の実践という側面はありますが、優先すべきは企業のリスク管理の実践です。

角田拓実

この辺りの産業医としての考え方はしっかりと押さえた上で従業員をサポートすることが大切ですね。

求められる中立性・独立性とは?

上記のような職場環境と従業員のサポートの間で働くのが産業医ですので相応の職業倫理は必要です。

この時によく産業医が使う言葉は「産業医の中立性と独立性」です。

産業医は常にこの言葉を意識しながら業務に当たらなければなりません。

会社側の都合よく動いてしまっては従業員に不利益が生まれてしまいます。

一方で、従業員によりすぎてしまっていてもクライアントである事業者に対して誠実であるとは言えません。場合によっては健康障害を発生させたということで事業者の責任が問われてしまう可能性があるからです。

角田拓実

産業医は医師として病気と闘うと同時に、会社を守る存在でもあるのです。

Dr.瑛理

臨床医としての立ち振る舞いだけでは企業にリスクを与えてしまうんですね。

掛け持ちのメリット・デメリット

臨床経験が活き診療に深みが出るという兼任のメリットと、企業での社会人としての振る舞いが問われるデメリットを対比した図

産業医と臨床医を掛け持ちすることでメリットとデメリットはあるのでしょうか?ここでは現役の産業医が考えるポイントを紹介していきます。

産業医と臨床医を掛け持ちするメリット

産業医と臨床医の掛け持ちの最大のメリットは臨床経験で培った知識や判断能力がそのまま活かせることでしょう。

病気や治療の生の知識を持った医師が職場で活躍するのは何にも代えられない貴重なポイントです。

事業者や従業員としても頼りになる先生が訪問していただければ心強いでしょう。

収入の面でも、臨床の収入に産業医の報酬が加わります。報酬の相場は産業医の報酬や年収の記事で解説しています。

さらに、医師として病院での勤務だけを行っているとどうしても世界観が狭くなってしまいます。往診などで患者さんの家で診療を行ったとしても社会との触れ合いとしては乏しいです。

産業医として企業に訪問することで「世の中では実際にこのように人々が働いているんだ」という単純ですが気づきがあると思います。この経験を臨床現場に持っていくことでさらに診療の深みがでてくるのではと考えます。

Dr.瑛理

病院の外で働く人を見ることが、診療にも生きてくるんですね。

臨床と両立するうえで、オンラインでできる業務の範囲はこちらです。

産業医と臨床医を掛け持ちするデメリット

臨床医が産業の現場に出てきた際のデメリットはやはり社会でのコミュニケーションスキルが問題になるケースが多いです。

一般的にはメールの送り方、名刺の渡し方、立ち振る舞いなどが問題になるケースが多いようです。

病院では医師は指揮命令系統のトップで働いていますが、企業ではまた別の指揮命令系統があり産業医は決してトップではありません。病院と同じような立ち振る舞いをしていて企業との関係性に傷が入ってしまうことはしばしばあるようです。

この点も別記事で詳しく紹介していきますので、産業医としての立ち振る舞いも意識してみてください。(立ち振る舞いが悪いと産業医案件で採用も難しいこともアリ。)

角田拓実

医師としての立ち振る舞いではなく、社会人としての動きが求められます。採用や契約更新にも大切ですので注意していきましょう。

掛け持ちできる案件をどう探すかは、こちらにまとめています。

掛け持ちできる案件を紹介会社で探すなら、選び方の比較はこちらです。

登録先を先に見ておきたい方は、以下の3社から始められます(広告)。どこも登録は無料で、産業医の求人も扱っています。求人は会社ごとに違うので、2〜3社に登録しておくと案件を比べやすくなります。希望の働き方は事実どおりに選んでください。

まとめ

今回は臨床医と産業医の掛け持ちに関して紹介を行いました。

嘱託産業医は臨床と掛け持ちでき、専属産業医も勤務先が外勤を認めていれば掛け持ちできます。ただし、専属産業医がほかの事業場の嘱託を兼ねるのは、通達の要件を満たす場合に限られます。

時間は平日の日中に作るしかないので、最初は午前1コマ・午後1コマで、1コマ1社から始めると無理がありません。

臨床医が産業医として業務に当たることで多くのメリットがあります。

産業医としての経験を臨床に持ち帰り診療に役立てている先生も多いです。

しかしながら、立ち振る舞いや行動指針など臨床医としてのマインドセットだけでは産業医業務が難しい場合もありますので、しっかりと学びながら両立を目指すのも手でしょう。

本サイトではこのような情報をさらに深掘りしていきますので、引き続きチェックをお願いいたします。

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この記事を書いた人

産業医の角田拓実です。医局で多忙な業務をこなす中で自分の時間を確保できる働き方を求めて産業医に転向。コネクションも業務経験もない状態から嘱託産業医を始め、株式会社豊田自動織機の専属産業医を経て、現在は株式会社サンポチャートを設立し、東海地方を中心に50事業所以上の職場健康管理に関わっています。このサイトでは、産業医になりたい医師が最初の1社目に出会うまでの手順と、紹介会社・働き方の比較を実体験から書いています。
資格:日本医師会認定産業医/博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/健康経営エキスパートアドバイザー
著書:『40代から始めるあなたの予防医学』(自由国民社)、『図解入門ビジネス 職場メンタルヘルスの基本と対応がよくわかる本』(秀和システム新社)

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