嘱託産業医の業務内容は?掛け持ちはできる?給与や相場報酬に関しても解説

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嘱託産業医の業務内容は?掛け持ちはできる?給与や相場報酬に関しても解説

こんにちは。産業医のDr.巴です。

今回は産業医の働き方の一つである嘱託産業医に関して解説を行っていきます。

嘱託産業医は産業医業務の中でももっともメジャーなスタイルです。

多くの医師が想像する産業医はおそらく嘱託産業医でしょう。

本記事では嘱託産業医に関して実際に独立事務所を開業して生計を立てている産業医が解説を行っています。

ぜひ最後まで読んでみてください。

Dr.巴

嘱託産業医はもっともメジャーな産業医の働き方です。メリットもデメリットもあるのでしっかり確認をしてみてください。

Dr.瑛理

私も嘱託産業医になる可能性が高いってことだからしっかり情報を集めなきゃ。

嘱託産業医とは?

嘱託産業医を選任しなければならないケースは?

従業員数と産業医の人数・勤務形態

産業医には嘱託産業医と専属産業医が存在しています。

専属は一つの場所に1000人以上の労働者が雇用されている事業所で選任が必須になっています。

一方で50人以上999人以下の企業では嘱託産業医を選任することになっています。

嘱託産業医は基本的には非常勤の医師として契約を行っており、月に1回~企業に訪問を行い職場の健康管理・衛生管理業務を行います。

労働者が50人以上いる企業は日本には非常に数多く存在しています。多くの産業医にとって業務を行うチャンスがあると言えます。

Dr.巴

産業医を選任する必要がある企業は非常に多いです。産業医の交代需要もあります。これから産業医を始めていきたい先生方にもチャンスがあるでしょう。

ほとんどの産業医は嘱託産業医

産業医は日本に10万人ほどいるといわれております。医師の総数は約30万人ですのでおよそ3人に1人の医師が産業医の資格を持っていることになります。

専属産業医は全国で3000人はいないといわれていますので、嘱託産業医の多さが際立ちますね。

もちろんすべての産業医資格の取得者が産業医業務を行っているわけではありません。

しかしながらほとんどの産業医は嘱託産業医なのです。

当然嘱託産業医から業務を始めるケースがほとんどですので、無理をして専属医から始めなければならないという訳ではありませんのでご安心ください。

Dr.巴

多くの産業医は嘱託産業医からキャリアを開始することが多いです。専属産業医をキャリアの最初に持ってくることは経験にはなりますが、臨床との兼務などを考えると嘱託医のほうが業務を開始しやすいでしょうね。

嘱託産業医は掛け持ち可能?

嘱託産業医を複数組み合わせて「掛け持ち」をすることは許可されているでしょうか?

嘱託産業医に関しては「産業医の掛け持ち」が許可されています。

したがって嘱託産業医にある程度慣れてくると多くの産業医は複数の事業所を産業医として担当するようになってきます。

様々な業種を経験することができるので産業医として経験値をためるにはもってこいの働き方と言えるでしょう。

一方でこのような掛け持ちは専属産業医では禁止されているため注意が必要です。

Dr.瑛理

嘱託産業医は複数の業種にチャレンジできる点は大きなメリットですね。オフィス系から工場まで産業医としてステップアップするのに必要に感じます。

嘱託産業医の業務は?

産業医の王道的働き方、臨床とのバランスもGOOD

嘱託産業医の業務は基本的な産業医業務をこなすことが大切です。

職場巡視、健康診断のチェック、面談などをキッチリとこなしていくことが事業者からの信頼に繋がります。

働き方のスタイルとしては月に1回~複数回事業所に訪問して1時間~半日程度業務を行うことが多いです。

開業医の医師が地域の産業医業務を担っていることも多く、臨床業務との兼務もしやすいですね。

産業医として最初のステップを開始したい際は非常に有効な選択肢だと言えます。

Dr.巴

臨床の外勤日を産業医業務に充てている先生も多いですね。徐々に産業医が多くなっていくケースもよく見かけます。

限られた時間の中で産業医業務を提供していく

一方で嘱託産業医の働き方は時間との勝負と言える面もあります。

1月に1回1時間の訪問で成果を出していく必要があります。

場合によっては2カ月に1回の訪問で発注される仕事もあるため、業務がなかなか回らないといったケースもあるようです。

一方で職場に課題感が無い場合はあっという間に業務が終わってしまう場合もあります。

あまりにイケていない対応が続くと契約を打ち切られる場合もあるためしっかりと成果を出していきたいですね。

Dr.巴

会社ごとに求められる業務は異なるので事業所ごとに最適な産業医業務を提供するバランス感覚も大事になってきます。

健康に関する外部コンサルタント的な一面もある

旧来は産業医は職場の中に入ってくる身内のような存在であったそうです。

労働安全衛生法にもそのような条文があり、企業から健康管理に関わる業務を担当するように分担しているという解釈になります。

一方で、近年では産業医は職場の健康管理に関して外部コンサルタントのようにふるまわなければならないケースも増えてきています。

最近では健康経営優良法人の認定を目指す企業が増えてきており、一番身近にいる健康管理の専門家として相談を受ける場合があります。

今後は健康経営をしっかり行うことができる産業医が求められるケースが増えてきそうです。

Dr.瑛理

健康経営の資格である健康経営アドバイザーや健康経営エキスパートアドバイザーの資格を得ることも採用のポイントになってくるかもしれませんね。

嘱託産業医をするメリット

時間的拘束が少なく働き方をコントロールしやすい

嘱託産業医のメリットとして大きなものとしては時間的拘束が少ないことでしょう。

1回の業務が数時間で終わることが多く、夜間の業務も無いため時間に融通が利きやすい点がポイントです。

もちろんクライアント企業を対象に業務を行うので遅刻やスケジュール変更の多用は厳禁ですが、病院で務める医師に比べては自由度がかなり高い業務と言えるでしょう。

自分自身で業務を組み合わせることで自分の働きやすいスタイルを構築することが可能です。

Dr.巴

油断をしていると仕事を受けすぎて逆に多忙になってしまう産業医も多いようです。

人間関係に悩まされることが少ない

嘱託産業医は専属産業医は他の仕事に比べて人間関係に悩まされるケースは少ないと言えます。

人間関係のトラブルは多くが時間を共有することで摩擦が生まれ発生することが多いですが、嘱託産業医に関しては訪問のベースが月に数回のペースですので「苦手な人ができるタイミングすら少ない」イメージです。

専属産業医の場合はかなり密に社内の人間関係と接する必要がありますのでこの点は嘱託医のメリットだと考えることができますね。

もちろんプロとしての対人関係構築能力は必要です。初対面の方でも瞬時に対応する必要があります。

様々な職場を経験することで視野が広くなる

嘱託産業医は掛け持ちが可能な産業医です。

様々な業種を同時期に経験することが可能です。

専属産業医であれば一つの事業所で業務を行うことになるのでこの差は大きいです。(もちろん専属医は会社規模が大きい分様々な経験をすることが可能です。)

オフィス系の仕事、IT系の仕事、工場など世の中にはたくさんの仕事があります。見識を広めるためにも様々な業種を経験することは非常に大切です。

Dr.瑛理

せっかくなら産業医として色々な業種にチャレンジしてみたいですね。

嘱託産業医のデメリット

1社目の壁を乗り越えることが大変

メリットの多い嘱託産業医ですが当然デメリットも存在しています。

それは1社目の壁が非常に厚いという点です。

1社目の壁とは、企業が新たに産業医を選任する際に産業医経験のある医師を優先して採用する傾向があることを指しています。企業としては1人しか採用できない産業医ですので、実績がある医師を採用したいという思いが出てくるのは当然なのです。

最初の産業医案件を確保するために30社以上の応募を行ったという産業医も存じ上げており、1社目の壁の高さを感じます。一方で何のストレスもなく1社目の壁を突破する先生もおり、タイミングと運が大切ともいえるでしょう。

Dr.巴

立ち振る舞いや言動など面接の際に相手をぐっと引き付けることも可能です。本サイトでは1社目の壁を超えるためのアドバイスを多数していきます。産業医デビューを目指していきましょう。

孤独な環境で仕事をすることになる

嘱託産業医は非常に孤独です。

基本的には職場に産業医をはじめとする医療職は産業医一人であることがほとんどです。

相談できる相手もおらず、自分自身の研鑽に向いている環境とは言いずらいでしょう。

特に産業医を始めた際は「そもそも仕事のやり方が分からない」といったケースも多く悩みは尽きません。

産業医を行う上で先輩や指導医を探すことは非常に重要と言えます。産業医のコミュニティに入ることで情報を集めることも作戦の一つと言えるでしょう。

Dr.瑛理

産業医は孤独なんですね。縦横のつながりを活かして情報を集めていきたいですね。

地域によっては移動距離や時間が長くなる

また、地域によっては交通の便が悪く移動時間が非常に長くなってくるケースが存在しています。

東京や都市部であれば移動時間が短く次々に事業所を回ることができますが、地方では1日に回れる事業所の数が減ってしまう場合もあります。

たとえ時給が良かったとしても移動の時間を考えると結局あまり得をしなかったというケースも存在してます。

地域によっては移動時間のコストもしっかり考えて仕事を受注する必要があるでしょう。

Dr.巴

移動時間が多い事業所では報酬単価を移動時間を考慮した上で上げてもらうように交渉をすることもあります。

嘱託産業の待遇は?

報酬は医師の時給に比べて高めの設定が多い

嘱託産業医の報酬は比較的恵まれているというのが現状です。

紹介会社経由であれば1時間1.5万円~3万円ほどが多いようです。

直接契約を行えば企業との交渉次第になってくるので5万円~20万円以上の顧問料を頂くケースもあります。

直接契約に関してはひと月当たりの契約になるので一概に比べることはできません。

いずれにせよ健康診断、コンタクトバイト、寝当直に比べての時給は高い傾向にあります。

Dr.巴

産業医をまず目指す際は紹介会社経由で産業医業務に慣れましょう。仕事が一通りこなせるようになれば直接仕事を受注できるケースも増えていくでしょう。

企業との直接契約、紹介会社経由の契約、衛生機関などからの派遣が存在

嘱託産業医の働き方としては様々なスタイルが存在しています。

企業との直接契約で仕事を行う産業医もいれば紹介会社からの受注を行うケースもあるのです。

さらに病院や健診機関などから産業医が職場に応援者として派遣されるケースもあります。

それぞれメリット・デメリットがあります。自分の働き方に合った働き方のスタイルを見つけていく必要があるでしょう。

契約期間終了リスクは常にアリ

メリットが多い嘱託産業医ですが注意しなければならない大きなポイントがあります。

それは嘱託産業医の契約は1年ごとの更新制の非常勤がほとんどだということです。

産業医として業務が不十分だと認識されたり、キャラクター性が企業と合わないと判断された際は、次回更新はありませんといわれることも少なくありません。

担当企業が単一のグループや紹介会社ばかりである場合、引き上げや解除に合った場合生活基盤が崩れてしまうことすらありますのでこの知識は頭に必ず入れておいてさい。

Dr.巴

ベテランの産業医はなるべく他分野の事業所と契約を行うことで1社解除になったとしても生活に支障が発生しないように上手に運営をしていることが多いですね。

まとめ

嘱託産業医は産業医業務の中でメジャーな働き方の一つです。

仕事の組み方や受注の仕方次第で自分の望むライフスタイルを形成しやすい働き方だと言えます。

一方で「1社目の壁」や「指導者の不在」といった問題も抱えています。

また、病院勤務と異なり非常勤での採用も多いため突然委託先との契約が打ち切りというケースも存在しています。

嘱託産業医をしっかりと行っていく際はそのメリットとデメリットをしっかり知った上で業務を行っていただければと考えます。

1社目の壁の乗り越え方は本サイトのテーマですので産業医デビューを目指している方はぜひチェックしていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

医局での多忙な業務を行う中で自分の時間を確保する生活スタイルを確立するために産業医に転向。コネクション無し、業務経験無しの状況から産業医業務を開始。多数の事業所を経験した後、現在は産業医事務所を設立している。
資格:日本医師会認定産業医/医学博士/労働衛生コンサルタント(保健衛生)

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