産業医の資格はどう取得?一般医師が入手しやすい資格3選をまとめてみた
こんにちは。産業医のDr.巴です。
今回は産業医の資格をどう取得していくか?という問題に関して解説を行っていきます。
産業医の資格を取得してから「あの時して別の資格を取得しておけば」と思うことも多いです。もちろんどのようなルートを取っても最終的には産業医として働けますのでご安心を。
ぜひ本記事を読んで産業医資格取得の参考にしていただければ幸いです。
産業医活動を始めたあとで「別の取得方法もアリだったな」と感じることもあります。情報は武器ですのでぜひ本記事をご一読してみてください。
産業医の資格は何がある?
産業医資格と言えば夏に実施される集中講習というイメージを持つ先生はかなり多いのではないでしょうか?
産業医資格は法律で明記されています。労働安全衛生法をチェックしてみましょう。
(労働安全衛生規則14条 第2項)
法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修で
あつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
二 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにお
いて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
三 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
四 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者
五 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者引用:労働安全衛生規則
整理していくと下記のようになっています。
- 研修を修了した者(=日本医師会認定産業医、産業医ディプロマ)
- 産業医科大学を卒業した者
- 労働衛生コンサルタント試験に合格したもの
- 労働衛生に関する大学の常勤教員または経験者
意外と種類があるのだなと考える先生もいらっしゃるかもしれません。それぞれの資格に特徴があるので確認をしていきましょう。
私も産業医の資格を取得し、様々な産業医と親密になるまでは法律上の取り決めは知っていてもそれぞれのメリットや難易度に関しては知らないことが多かったです。
日本医師会認定産業医
日本医師会認定産業医は産業医資格の中では最もメジャーな資格でしょう。
産業医に関する講習を50単位受講した後に産業医として認定を受けることになります。
1単位は1時間の換算になりますので約50時間講習会を受講する必要があります。意外とボリューム感はありますので産業医の資格を取りたいと考えている方は早め早めに動き出しておく必要があるでしょう。
産業医の仕事の打診を受けてから取得していては間に合いませんので、興味を持ち始めたら早めに動き始めることも大切ですね。
集中講座で一気に産業資格を入手
日本医師会認定産業医の資格の取得方法として夏などに行われる集中講習が人気です。
1週間程度をかけて毎日朝から晩まで講習会を受講し一気に50単位の取得を目指します。
基本的に講習中には試験は無く、単位が付与されます。
集中講座は産業医の資格を一気に短期間で取得することができる非常に有益な機会です。
席を抑えて参加できれば産業医資格の取得はほぼ確実になります。しかしながら、現在はプラチナチケットになりつつあります。
単位を地道に集める方法
単位の取得方法は一気に取得する集中講座もありますが、一つずつ確実に単位を取得していく方法もあります。
単発の産業医講習会は全国で定期的に実施されています。集中講座に比べて席の入手ハードルは高くありませんので、時間はかかってもいいが確実に取得していきたいと考える先生は得に推奨できる方法です。
講習会の予定表は日本医師会が各県で行われる単位や内容を検索しやすい形で掲載してくれていますので情報を集めていくとよいでしょう。
前期講習・後期講習と単位が分かれていることや更新単位では履修したことにならないなど注意点もいくつかあるので制度全体の予習も大切になってきます。
時間がかかっても確実に取得したい方は地道に単位を集めていくことも可能です。集中講座よりも単位は集めやすいです。
5年の更新単位に注意
日本医師会認定産業医は5年ごとに更新の手続きがあるので注意が必要です。更新には20単位=20時間の講習が必要です。
更新の期間が迫ってきて「しまった単位を取得していない」といったことにならないように注意をしてください。
なお、日本医師会認定産業医の資格が失効したとしても「定められた講習会を受講した」事実に変化はないため産業として業務に当たることは可能です。
日本医師会認定産業医の資格が失効しても実務は可能ですが、企業から見た印象を考えると更新は必須級だと考えています。
産業医学ディプロマ
産業医医学ディプロマとは?
産業医ディプロマは産業医科大学が発行する産業医に関する研修を修了した認定書です。
具体的には産業医科大学で実施される2カ月ほどの「産業医学基本講座」を修了したことを認定しています。
産業医学ディプロマを取得していれば産業医として働く資格を得たことになります。労基署に提出する際に使用する産業医としての資格として活用可能です。
また、ポイントとして労働衛生コンサルタントの筆記資格の免除や日本医師会認定産業医としての申請も可能など様々な特典を得ることが可能です。
なお、「産業医学基本講座」は東京でも数カ月かかりますが受講は可能です。詳細は下記の公式HPから閲覧可能です。
時間はとられてしまうけれど産業医の資格が取得できることはありがたいですね。メリットも大きいですね。
産業医資格の更新は必要無し
さらに産業医ディプロマは産業医としての資格更新の必要がありません。認定証を持っていれば半永久的に産業として活動することが可能です。
ベテラン講師陣による専門的な学び
産業医学基本講座の大きなメリットとしては産業医科大学に所属する業界の第一線で活躍する先生の指導を受けることです。
しっかりと腰を落ち着けてカリキュラムを学ぶことで産業医としての基本を学ぶことが可能です。
先生との繋がりだけでなく、同期として学んだ先生とのつながりも太く、産業医として活動する際の支えと感じる卒業生も多いと受講した先生からはよくお話をされています。
講師の先生や同期の先生とコネクションを作ることも大きなメリットですね。2か月間共に学ぶことは非常に貴重な体験といえるでしょう。
労働衛生コンサルタント
労働衛生コンサルタントとは?
労働衛生コンサルタントとは職場の衛生管理に関する専門家としての国家資格です。
医師でなくても取得可能な資格ですが、医師が取得した際は「労働衛生に関する知識を十分に有している者」と判断され産業医の資格を得ることが可能です。資格難易度から産業医のステップアップとして経験者が受験するケースも多いです。
1年に1回、筆記試験と口述試験が課せられます。産業医資格未取得の場合は筆記試験と口述試験を両方受けなければなりません。両方の試験を合格する率は25%程度と言われており難易度は決して簡単ではありません。
国家資格を入手して産業医資格を入手
労働衛生コンサルタントは国家資格という位置づけですので、試験の受験資格を有しておりさえすれば、申し込みをすれば受験の間口が広げられています。
労働衛生コンサルタントは医師であれば受講資格を満たすことができるので、あらゆる医師が受験可能です。中には研修医で受験をし合格する強者な先生もいらっしゃるようです。
日本医師会認定産業医を取得するための集中講習会の予約がどうしても取れず受験を検討するケースが増えてきているようです。
集中講習の席が足りなくなったことでステップアップ目的の先生だけでなく、未経験の先生のチャレンジが増えてきました。
試験のハードルは高いが更新の必要無し
労働衛生コンサルタントは産業医としての実務経験が問われる口述試験が存在していますが、しっかりと対策を行うことで合格をすることも可能です。
日本医師会認定産業医とは独立した資格なので認定医を維持したい際は更新の手続きが必要ですのでご注意ください。
一般医師が取得が現実的でない産業医資格
産業医の資格には一般の医師が取得しづらいものも存在しています。ここでは後学のために紹介を行っておきます。
産業医科大学を卒業
当然ですが産業医科大学は産業医を養成するための医科大学ですので、卒業した医師は産業医としての資格を持つことになります。
コネクションや蓄積された経験など一般の医師がアクセスしにくい資源が多数ありますが、産業医になるために再受験するということはほぼないと考えますのでこの枠で紹介させていただきました。
大学の衛生学の教員になる方法
大学で公衆衛生にかかわる教室の教授、准教授、講師に当たるものとその経験を有する医師は産業医の資格を持つといわれています。
この枠に関しては助教では満たすことができませんのでハードルはさらに高まっていきます。
こちらに関してもいきなりポストを得ることは難しいと考え「一般医師が取得しずらい枠」として紹介させていただきました。
まとめ
今回は一般医師が取得しやすい産業医3資格として産業医資格を紹介させていただきました。
どの資格でも産業として活動できますが、取得難易度と得られるメリットがそれぞれ異なります。
経験を重ねていけばあまり違いはありませんが、早期の段階では後から振り返って「こっちの資格を取得しておけばよかったな」と考えるケースもあるでしょう。
ぜひ本記事を活用して今後の資格取得に役立てていただければ幸いです。本サイトでは産業医デビューするための情報を配信しています。ぜひ他の記事もチェックしていただければ幸いです。