医師が産業医として病院以外の企業で働くメリット・デメリットとは?
こんにちは。産業医のDr.巴です。
今回は医師である産業医が病院ではない一般企業で働くメリットとデメリットに関して紹介を行っていきます。
産業医として働いてみたいけれど、病院以外で働くイメージがなかなか湧いてこないという先生はぜひ本記事を読んでいただければ幸いです。
一般企業で働くメリットとデメリットが分かってくると考えます。
病院以外で働くイメージが湧きずらい先生も多いと思います。本記事では企業で働くことやそのメリット・デメリットに関して経験者が説明を行っていきます。
病院の外で働くということ
病院の外で働くということ
病院の外が働くことは多くの医師にとってメリットが多いと、現役で一般企業を対象に仕事をしている産業医の私としては考えます。
医師が培ってきた医学的知識や経験は多くの企業で求められています。
疾病を抱えたまま働く方やそもそも今後悪化するであろう健康診断結果に気が付かず業務にあたっている方は多いです。
メンタル不調から復職後も体調がすぐれないまま業務にあたり、周囲の方が困っているケースもあります。
悪性腫瘍の術後化学療法の副作用や対応に関して詳しい会社担当者は多くは無いでしょう。
病院の外でも医学的知識を持った医師が求められています。
臨床業務で培った経験が活かされるケースもあるんですね。
一般企業で働くハードル
医師はしばしば一般の社会常識が通じにくいと言われてしまうことがあります。
嘱託産業医・専属産業医問わず病院の外で働くことは新しい挑戦です。病院勤務を続けてきた先生方にとって一般企業は未知の世界かもしれません。
病院で働いている中で様々な病院のルールや病棟ルールなどがあり、しっかりと把握・理解して仕事を覚えてきたのではないでしょうか?
しかしながら、一般企業で働くことはこれまで培って覚えてきたルールが通用しないことが多いこともしばしばあります。
病院で培ったルールが一般企業では通じないケースは多いです。一般企業に合わせた情報のアップデートは必須です。
働き方の選択肢が増える
病院の外で働くことは医師の働き方の選択肢に多数の方向性を示してくれます。
病院で臨床業務を行っている少なくない医師が閉塞感を感じていると相談されることがあります。
そんな医師に病院以外での働き方の選択肢があると説明をすると非常に驚かれることが多いです。
後述するように医師が病院以外で働く現場は多くはありませんが確かに存在しています。
病院の外で働いてみたいけど、製薬会社や起業家はハードルが高い印象ですね。フリーランス医師として働く医師が増えている印象です。
病院外の勤務としては働くハードルが低い
少なくない医師が病院以外で働きたいと考えている一方で前述したように製薬会社勤務の医師など希少性が高い業務は少なくありません。
その中でも産業医は医師としてチャレンジしやすい分野でしょう。産業医は一般企業で働くことができる比較的道が大きく設けられている選択肢です。
日本には産業医の選任義務のある企業は非常に多いです。製薬会社の数に比べて産業医には非常には多くの席が存在しています。
労働安全衛生法上で医師が産業医として職場から選任されなければならないことが決まっており、企業からも優秀な医師は求められています。
また、常勤での業務とは限らず、嘱託産業医として定期非常勤のような形態で勤務も可能ですのでハードルとしては極端に高くないと言えます。
もちろん産業医として相応の勉強は必要ですが、産業医は現実可能性の高い仕事形態であると考えても良いでしょう。
病院の外で働くメリット
病院以外の職場で働くことは医師にとって様々なメリットがあります。
ここでは現役産業医から見た病院外ではたらくメリットに関して説明を行っていきます。
病院以外の様々な分野の職場を経験できる
病院以外で働く経験をすることは医師にとって非常に貴重です。
医局員生活を窮屈に感じる先生は少なくありませんし、環境を少しでも変化させたい先生もいらっしゃいます。
そんな中産業医という選択肢は医師のバックグラウンドを活かしながら、治療以外の分野をチャレンジできるいい機会だと言えます。
幸い優秀な医師は職場でも求められることが多いです。産業保健の知識をしっかりインプットしながら業務を行っていただくことは、医療現場以外の分野に挑戦するのに最適でしょう。
病院以外で医師が働くチャンスは限られていますが、産業医は比較的チャレンジしやすい分野ですね。
救急対応・当直・オンコールが無い
一般企業で働く産業医にとって救急対応・当直・オンコールは基本的にはありません。
職場にいらっしゃる従業員の方は基本的には病気を持たない方、慢性疾患、治療後の状態の方がほとんどです。
もちろん職場内で急に体調が悪くなり産業医が緊急で対応を行うことはまれにありますが、頻度としてはごく限られた機会と考えて差し支えないでしょう。
医師の働き方の中では身体的にハードな面に関しては負担感は実際少ないです。
体調の変化やご家庭の状況など生活環境の変化から第一線から離れざるを得ない先生がやりがいを持って働くことができるのも産業医の魅力と言えるでしょう。
誰にでも家庭環境の変化はあります。産業医としてキャリアを重ねていくことができるのも大きな魅力です。医師のパラレルキャリア推進に関するHPなども参考になるでしょう。
職場で得た経験を臨床業務に活かすことができる
一般企業で産業医として働く場合には医師としての経験が求められてきます。
私たちが考えている以上に正確な医学知識は知られていません。
企業において健康問題は一定数存在しています。そんな中で力を発揮するのが産業医の仕事です。
一般企業においても私たちが培ってきた知識・経験は強みになります。
病院の外で働くデメリット
医師が一般の企業で働くことにはメリットもある一方で注意すべき点も少なくありません。
ここでは代表的な注意点をチェックしておきましょう。
病院の感覚で仕事に臨むと足を掬われることも
医師は医科大学という限られた環境を卒業後、初期研修、後期研修とキャリアアップをしていくことが多いです。
医療業界の常識が人生の基本軸になってくるのです。当然悪いことではありませんし、医師として研鑽を積んでいく上で避けては通れないことだと考えます。
一方で、一般的な企業に医療業界の常識を持っていくと思わぬ失敗をしてしまうこともあります。例えば、私たち医師は残業に関して比較的寛容(というよりもハードスケジュール)に仕事を行います。ところが、一般企業で産業医として働く際は長時間残業面談を行ったりします。その際に、精神的に参っている人に「もっとがんばれ」と声をかけてしまっては問題になってしまいます。
世間と病院とのギャップをうまく埋めていくことも産業医として働く第一歩になるのです。
病院以外の感覚があり、ある程度考え方や気持ちを調整することも産業医として働くうえで大切なことです。
産業医だけの活動だと臨床医としての感覚が鈍る
産業医だけの活動に集中する医師も最近は増えてきました。
個人事業主や法人を立ち上げて集中的に業務に当たるスタイルの産業医です。私自身もすべての業務を産業医のみで行う独立系産業医です。
このような働き方は産業としての勘所や経験値が高まりやすく専業として行うことはメリットともいえます。
しかしながら、産業医の業務だけを行っていると臨床医としての力が落ちていくことは事実です。当然臨床現場に不在なわけですから知識も少しずつ時代に取り残されますし、診断・治療技術も落ちていきます。
産業医の実務後に臨床分野に戻る先生も多くいらっしゃいます。産業医としての活動に集中しすぎて臨床能力を落とすことに注意しなければなりません。
産業医と臨床との掛け持ちは許されていますので、経済的リスク分散のために臨床業務を継続して行うことはオススメです。
私自身は産業医を専業として活動しています。少しずつ臨床的な力が下がっていくのを感じますので普段から知識のアップデートを怠らないように注意をしています。
まとめ
医師が産業として病院以外の企業で働くことは医師にとっても企業にとっても大きなメリットがあります。
一般企業では業務上や人事労務上の知識・経験は多数ありますが、医学的な知識や判断は難しい部分がほとんどです。
また、いわゆるQOLも高い傾向があり家庭環境の変化によるキャリアチェンジの一つのルートとしても有用化でしょう。
臨床業務から外れてしまった場合は臨床能力が落ちてしまう場合もありますが、バランスよく勤務を行うことで能力は維持できるでしょう。
私自身は産業医は一般企業は研鑽を積んできた医師が活躍する場としては非常に魅力的だと考えます。
本サイトでは産業医を目指す方に1社目の壁を超えるために知っておきたい知識や情報を共有しています。ぜひ今後も継続的にチェックしていただければ幸いです。
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